最新記事

電気自動車

ここまで来たベトナムのEV、アメリカに進出

Vietnamese Automaker VinFast Plants an Electric Foot in the American Market

2022年7月4日(月)12時45分
ジェイク・リンゲマン

ちなみにフォード・マスタング・マッハEは、ベースモデルで最大出力が266馬力、最大トルクは317ポンド・フィート(43.75キログラム・メートル)。価格は、税控除前で4万2895ドル(約580万円)からだ。

vin7.jpg

デグラフは、こうコメントする。「数年のうちにここ(アメリカ)で発売予定とされる、魅力的なクロスオーバー車の3モデルは、3列シートのVF9から、秀逸なスタイリングのVF7まで、なかなか興味深い。特にVF7は、私が見る限り、3つの中で最も『プレミアム』なモデルだという実感がある。ビンファストは、優れたADAS(先進運転支援システム)とインフォテインメント・テクノロジーを搭載すると約束しているし、手堅い航続距離も、大半のアメリカの消費者にとっては十分すぎるほどだろう」

VFシリーズは、400ボルト対応の電気アーキテクチャを採用しており、充電時間が短い。VF9では、残量10%から70%までの充電時間が、標準タイプのバッテリーでは約26分、大容量タイプでは35分とされている(どちらも、DC急速充電器を用いた場合)VF8では、これがそれぞれ約24分と31分と、さらに短縮されている。比較として、77.4キロワット時のバッテリーを搭載する起亜のEV6では、航続距離は310マイル(約499キロメートル)だが、残量10%から80%までの充電には18分しかかからない。こちらの新型EVでは、800ボルト対応のアーキテクチャを採用しているため、充電時間が短くて済むのだ。

デグラフは、以下のような問題点も指摘した。「私はビンファストの成功を心から願っているが、バッテリーパックに関して、車両価格に上乗せする形で購入者に月額あるいは年額のサブスクリプション料金を課すやり方には、少し不安を感じる。消費者が購入できるEVの車種が年々増えていく中で、競争はさらに激化するだろう。世の中の人々がみな、サブスクリプションという考え方に魅力を感じているとは言いがたい。特に、車の所有となるとなおさらだ」

サブスクリプションの導入により、買い手はビンファーストから、追加費用のかからない別のメーカーに流れる可能性がある、とデグラフは述べる。

「ビンファストは技術に優れ、現実的で、この市場を理解している」とダンは述べる。「アメリカ市場へ容易に参入できるといった幻想は全く抱いていない。ドイツ、日本、韓国のメーカーも、信頼を得るのに長い年月を要した。だが、ビンファストは何の準備もなくやってきたわけではない。良い手札を持ち、それをひっさげて勝負を挑みに来たのだ」

(翻訳:ガリレオ)

試乗の動画を見る
VF8の写真を見る
VF9の写真を見る

20250311issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年3月11日号(3月4日発売)は「進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗」特集。ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニスト、29歳の「軌跡」

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中