ここまで来たベトナムのEV、アメリカに進出
Vietnamese Automaker VinFast Plants an Electric Foot in the American Market
ノースカロライナ州に組み立て工場を建設する合意をしたビンファスト
<ベトナム初の世界的自動車メーカーが、グローバルの存在感を急拡大させている。内燃エンジン搭載車両の生産を年内に停止し、電動自動車に専念。最新の技術とサービスで米市場での成功を目指す>
自動車業界は排他的な集団で、滅多に新参者の参入を許さない。テスラやリビアンは例外だ。とくに電気自動車(EV)市場への進出を果たすのは多くの場合、「ポールスター」のように定評ある自動車メーカーの傘下にあるブランドで、イタリアや中国のメーカーはこれまでのところ、同市場に参入することができていない。
この狭き門に挑もうとしているのが、ベトナムの自動車メーカー「ビンファスト」だ。
ビンファストは、ベトナムの複合企業最大手「ビングループ」の子会社として2017年に創設された。親会社のビングループは、実業家のファム・ニャット・ブオンが1993年に創業。最初はウクライナで即席麺の製造・販売事業を展開し、2000年にベトナムに帰国すると事業を拡大していった。
ビングループ傘下には自動車メーカー「ビンファスト」のほかにも、スマートフォンを扱っていた「ビンスマート」、東南アジア最大の野生生物保護公園「ビンパール」、テーマパークの「ビンワンダーズ」や薬局チェーンの「ビンファ」などがある。
若いEV市場にチャンスを見出した
世界的なEVコンサルティング企業「ゾゾ・ゴー」のマイケル・ダン最高経営責任者(CEO)は本誌の取材に対し、(ビンファストが米市場参入を目指すのには3つの要因があると語った。「1つ目はビンファストが市場にチャンスを見出したことだ。EV市場はとても若く、ゲームは始まったばかりだ」
「2つ目は、ビンファストはベトナム国内では英雄であり、国としてのプライドがあること。同社はベトナム政府からも全面的なサポートを得ている。そして3つ目は、中国とは異なり、米政府からも全面的なサポートを得るチャンスがあることだ」
ビンファストの社名は、同ブランドが重点を置く「ベトナム」「スタイル」「安全」「創造性」「パイオニア」を意味するベトナム語の単語を組み合わせたものだ。
米市場への参入に向けた同社の第一歩が、2021年のロサンゼルス・モーターショーだった。ここで中型の2列シートSUV「VF8」(価格は4万1000ドル~)と、VF8よりも大きいが同じく中型の3列シートSUV「VF8」(価格は約5万6000ドル~)を発表した。