ロシア元国営通信ジャーナリストが語る、驚愕のメディア内部事情
REPORTING FROM EXILE
ロシアのメディアで政府の直接・間接の統制を唯一免れているのは、ノバヤ・ガゼタ紙だ。2006年に射殺されたアンナ・ポリトコフスカヤ記者をはじめ、暗殺されたスタッフや記者が最も多い。
そのノバヤ・ガゼタといえども、軍の検閲を受け入れるしかない。今もウクライナ発の驚くほど勇気ある戦況報告を掲載してはいるが、戦争については報じていない。
戦争への言及は一切ない。彼らはこの現状を受け入れざるを得ないのだ。私たちジャーナリストにとっては恥ずべきことだが、ほかに道はない。
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一般のロシア人に罪はない
ただし、私が現在ライター兼編集者をしている独立系ニュースサイト「メドゥーサ」は別だ。何しろ検閲の結果、生まれたのだから。
メドゥーサはロシアのメディア再編によって古巣を追われた人々によって2014年10月に創設された。ウクライナ戦争の第1段階が早くも本格化していた時期に、彼らはロシアを離れ、モスクワから空路約1時間半のラトビアに拠点を構えたのだ。
記者と編集者の大半はモスクワにいた。自分たちが亡命メディアやパルチザンだという意識はない。読者は数百万人に上っている。
今や私は毎日24時間戦争について報じているようなものだ。皆が週6日、1日約14~15時間働いている。
科学担当編集者はただひたすらリアルタイムの戦況マップを作製している。報道内容は戦争一色だ。
今もモスクワに残って国営メディアで働いている大勢の人々と話したが、彼らはすっかりやる気をなくしている。派手な反戦の主張や抗議の様子が中継され、「離反」はさらに増えるだろう──カメラの前に走り出て「戦争反対」と訴えた女性のように公然とではないかもしれないが。
ロシアの状況は目に余る。だが、一般のロシア人に不満をぶつけないでほしい。
今回の戦争の結果、メドゥーサのビジネスモデルはこの1年で2度にわたり崩壊した。まず昨年4月、ロシア政府がメドゥーサを「外国エージェント」と認定。この事実上の非合法化で、ロシアの広告主からの広告収入が断たれた。
そして、数週間前にはロシア国内のユーザー3万人からの定期的な寄付もなくなった。3月5日、米クレジットカード大手のビザとマスターカードがロシアでの業務停止を発表したためだ。
おかげで、私たちはクラウドファンディング・キャンペーンを一晩で練り直す羽目になった。新たなターゲットは、メドゥーサが何かすら知らないかもしれないロシア国外のユーザーだ。
理屈は分かる──ロシアは有害で批判の的になっている、というわけだ。
それでも、ロシアの普通の人々のことも考えてみてほしい。必ずしもプーチン政権を支持しているわけではない人々、何も悪いことはしていないのに苦痛を強いられている人々のことを。
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