NASAが40年ぶりの金星ミッションへ 気候変動で何が起きるのかを探る
火星への偏重からバランスを取り戻す
このところNASAは、金星ではなく火星の探査に力を入れてきた。2018年には火星着陸機「インサイト」を送り込み、今年は探査車「パーサヴィアランス」と小型ヘリ「インジェニュイティー」の稼働に成功している。こうした傾向を経て、金星に回帰するのは数十年ぶりだ。NASA以外の全世界のプロジェクトを含めても、過去30年間で金星を周回した探査機は数えるほどしかない。日本からはJAXAが2010年、探査機「あかつき」の周回軌道投入を試みている。
宇宙科学情報を扱う『スペース.com』は金星探査が冷遇されていた理由として、ソ連の衰退で競争が減速したことに加え、NASAが火星に資源を集中してきたことなどを挙げている。かつて水が存在していたという痕跡がはっきりと確認できる火星は魅力的な調査対象であるうえ、超高温の金星よりは探査機の開発が容易だ。
ところが、近年では再び火星への注目度が高まっている。位置とサイズが地球に似ているにもかかわらずデータ収集が遅れている点が科学者のあいだで問題になってきているためだ。また、金星の地上50キロ付近では温度と気圧が地球の条件に近くなるため、硫酸にさえ耐えられれば微生物が生息している可能性があることがわかってきた。
さらに、金星を見据えるのはNASAだけではない。欧州宇宙機関は、地表組成の分析を主目的とする金星探査機「EnVision(エンヴィジョン)」の計画を明らかにした。2030年中頃までの打ち上げを予定している。英BBCは、NASAのプロジェクトと補完関係にあることから、両者は共同で計画を進める意向だと報じている。加えて、ロシアがオービター(周回機)と着陸機の打ち上げを2023年ごろに、インドがオービターの打ち上げを2024年に予定している。順調に運べば今後数年ほどで、謎に包まれたお隣の惑星・金星から、情報が続々と舞い込むようになりそうだ。