新型コロナ:「医療崩壊」ヨーロッパの教訓からいま日本が学ぶべきこと
Lessons from the European Lockdown
これらに対して、イギリスは当初異なる対策を示した。3月12日に行ったボリス・ジョンソン首相の会見は、具体策として持続する咳や発熱がある場合は7日間自宅隔離することを伝えただけで、今のところ学校は閉鎖しない、大規模イベントも禁止しない、欧州からの渡航制限もしないというものだった。
しかし、翌日の13日には一転して500人以上の集会禁止の方針を伝え、16日にはパブやレストラン、劇場などを避けるよう求め、高齢者や妊婦、基礎疾患のある人などは外部との接触を断つことを要請した。17日には不要不急の海外渡航を避けるよう勧告し、20日には学校を閉鎖、23日には必要不可欠な活動以外の外出を禁止し、運動のための外出は1日1回と制限された。
一緒に暮らしていない2人を超える集まりは禁止され、必需品を扱わない店舗の閉鎖も命じられた。守らない場合は罰金の対象になる。ちなみに3月26日現在のイギリスの感染者数は9533人、死者数は日本の10倍以上の463人で、首相会見の3月12日から26日までに死者数は70倍以上増加した(ジョンソンも27日に感染が確認された)。
なぜ英国首相は当初あのような発言をし、1日で撤回したのだろうか。まず、当初のスピーチは同席していた英政府のパトリック・バランス首席科学顧問とクリス・ウィッティー首席医務官など専門家の意見を反映している。
彼らの分析によると、イギリスの感染流行はまだ初期段階で、感染者は次の4週間に急増し10~14週後にピークを迎える。そのため、現時点で厳しい行動制限を導入すると感染流行が最高潮に達した頃に自粛疲れが生じる危険性があると判断した。
また、大規模集会の禁止や学校閉鎖などの効果はエビデンス(科学的根拠)がないため、むしろ強行することによる負の影響を考慮した。手洗いや、症状が表れた場合の自主隔離の実践だけでも、流行ピーク時の感染者数を2割減らせるとのエビデンスも考慮し、戦略を練ったのである。