新型コロナ:「医療崩壊」ヨーロッパの教訓からいま日本が学ぶべきこと
Lessons from the European Lockdown
イタリアの感染者数が200人に迫った2月23日、ジュセッペ・コンテ首相は北部の11自治体を封鎖し、住民約5万人の出入りを禁止した。北部2州の学校閉鎖、映画館などの閉鎖が決まり、サッカーのプロリーグ、セリエAの試合も延期となった。
だが、そんな中でも域内にあるスキーリゾートには多くの人が集まり、夕食前に軽食とお酒を楽しむ「アペリティーボ」でバーはにぎわっていた。与党の政治家でさえ、新型コロナに負けずに楽しもう、と言わんばかりにグラスを傾ける姿をSNSに載せ、その数日後に感染が確認された。
感染者が3000人、死者が100人を超えた3月4日には政府は緊急閣議を開き、イタリア全土で学校や映画館などの閉鎖を含む首相令を発し、国民に抱擁や握手をやめるよう呼び掛けた。10日には全国で外出禁止、さらに食料品店と薬局を除く全ての店舗の閉鎖と在宅勤務を指示した。
次第に対策を強硬化していった理由として、人々の意識・行動が変わらなかったことがある。イタリア人は人と交わるのが大好きで、会えば握手や抱擁、両頰にキスをし、エスプレッソやワインを飲みながら顔を突き合わせて会話を楽しむことが多い。いまだに3世代家族も多く、若者と高齢者の接触は頻繁だ。
このような「濃厚」な人間関係は、感染流行にとって格好の条件であり、拡大阻止に必要な「社会的距離」を実行するには、個人の意識や行動の変容が必須である。しかし、イタリアではそれも難しく、感染が拡大、オーバーシュート(感染爆発)してしまった。
欧州ロックダウンの道程
こうしたイタリアの状況と対応を見ながら、各国首脳が動いた。スペインでは3月14日、ペドロ・サンチェス首相が感染拡大に伴って「警戒事態」を宣言し、全土で移動を制限した。罰金や禁錮など罰則規定もあり、警察が全国の市街地や駅でパトロールを開始した。
フランスでは12日にエマニュエル・マクロン大統領が「過去1世紀に起きた保健衛生上の最大の危機」として全国の託児所から大学までを閉鎖。高齢者や持病のある人の外出自粛などを求め、16日には「これは戦争だ」と何度も繰り返しながら、外出禁止のみならず、親族や友人との集会も禁止し、国境も封鎖した。
ドイツでは11日にアンゲラ・メルケル首相が1000人以上の集会の中止、16日には小売店、劇場、スポーツ施設などの閉鎖、飲食店の営業時間短縮と客の人数の制限などを要請したが、21日以降には全ての飲食店を営業禁止、幼稚園や学校も休校、22日には3人以上の集会も禁止した。