最新記事

基礎知識

ムスリムに恋をしたら結婚できる? 今さら聞けないイスラム教15の疑問

2018年7月5日(木)21時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

mustafagull-iStock.

<どんな神様を信仰しているのか、いつどこでどうやって祈るのか、ファッションや髪型に決まりはあるのか......。イスラム教のこと、どれだけ知っていますか>

今年6月まで、サウジアラビアは世界で唯一、女性の運転が禁じられた国だった。そんな国がこの21世紀にあるのかと、ニュースを見て驚いた人も多いだろう。

サウジアラビアはイスラム教国だが、なかでも戒律の厳しい宗派が主流の国。女性は長らく、さまざまな制約を受け、差別的な扱いを受けてきた。だがそれも今、ようやく変わり始めている。

政治や国際情勢だけでなく、人々の生活や考え方にまで大きな影響を及ぼすのが宗教だ。そしてそれは、日本から遠い異国の話ばかりではない。

イスラム教にしても、正確な統計は存在しないものの、日本にも既に外国人ムスリム(イスラム教徒)が25万人以上、日本人ムスリムが15万人以上いるとも言われる(一般社団法人「IIHOジャパン」)。それに加え、ムスリムの訪日観光客も急増中だ。

彼らはどんな信仰を持つ人たちで、どのように付き合えばいいのか。イスラム教についてよく分かっていないという人は少なくないだろう。そうした疑問の解消に役立つのが、『Pen BOOKS 知っておきたい、世界の宗教。』(ペン編集部・編、CCCメディアハウス)だ。

イスラム教のみならず、ユダヤ教、キリスト教、ヒンドゥー教、仏教、神道と、6つの宗教の基礎知識を網羅し、信徒たちの暮らしや宗教芸術にもスポットを当てた本書。その「15の疑問で理解する、6宗教の基礎知識。」のパートから、イスラム教に関する箇所を抜粋する。

penbreligion-cover180.jpg
Pen BOOKS 知っておきたい、世界の宗教。
 ペン編集部 編
 CCCメディアハウス

【参考記事】牛肉はOKだがチーズバーガーはNG ユダヤ教を15の疑問で読み解く

◇ ◇ ◇

Q 01. どんな神様を信仰していますか?

アッラーという唯一神。「アッラー」とは唯一絶対神を意味する固有名詞と捉えられ、したがって「アッラーの神」のように、ほかの神の存在を想起させる言い方は不正確である。

アッラーは時間的な始まりも終わりもない永遠の存在で、ほかに並び立つ者がおらず、この世界を創造し、現世の事物・事象の一切の活動や様態を司る神である。

また、アッラーを含めた99の美称をもち、それらはアッラーの本質の一側面を示すものと考えられている。たとえば、「ハーリク」という呼称は、世界の創造主としての一面を、「アーリム」という呼称はあらゆることに精通している一面を示している。

Q 02. いつ、誰が始めたのですか?

ムハンマドへの啓示が始まり。610 年、メッカのクライシュ族に属するハーシム家の一員として商業に携わっていたムハンマドがアッラーの啓示を受けたことで始まった。

当初ムハンマドは神の啓示を受けたとは考えず、恐怖に慄くばかりであったという。しかし繰り返し下される啓示や妻ハディージャの励ましなどにより、アッラーの啓示を受け取り、それを人々に伝える預言者であると自覚する。以後、メッカの伝統的な偶像崇拝をやめ、唯一神アッラーを信仰し終末の到来を認識し、アッラーの言葉に従って生きるよう家族や親しい者たちに説き、その布教の範囲を広めていった。

Q 03. 聖典は何ですか?

コーラン(クルアーン)である。コーランはアッラーからムハンマドに対し、22年間にわたって断続的に与えられた啓示(アッラーの言葉)を集成した書物だ。アラビア語の音ではクルアーンという表記が近い。「誦(よ)まれるもの」を意味し、声に出して「誦む」ことが正しいとされ、内容だけでなく、音声的な意義を有する聖典である。

114 章構成で、アッラーがムハンマドや信徒に語りかける形で書かれており、内容は神の唯一性の強調、終末の到来の予告、来世の様子に始まり、礼拝や喜捨の必要性、結婚や遺産相続、商取引の際の契約方法など、イスラム教徒の信仰と生活全般にわたる。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、メキシコに制裁・関税警告 「水を盗んで

ビジネス

中国不動産の碧桂園、一部債権者とオフショア債務再編

ワールド

ブラジル政府、貿易網の拡大目指す 対米交渉は粘り強

ビジネス

トランプ関税、米自動車メーカーに1080億ドルのコ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中