最新記事

アルコール

スコッチウイスキー、ブレグジットで「うまみ」増すか?

2018年2月27日(火)18時20分

世界のスコッチの37%を生産するディアジオは、英国が韓国や南アフリカといった国との間で、有利なEUの貿易合意をそのまま応用した協定を締結することを熱望している。

ディアジオのアイバン・メネゼスCEOは、年間の売上高が120億ポンドの世界企業にとって、ブレグジットの混乱やコストは「大きなものではない」と見ているという。同CEOによると、ディアジオと業界は、懸案解消に向けて英政府と「非常に力強く」協力しているという。

「1ケースのジョニーウォーカーを欧州に持ち込んだり、アイルランドとの境界を越えるのを遅延させたりするようなことは望んでいない」と、メネゼス氏は1月のロンドンでの記者会見で述べた。

冒険の精神

ブレグジットに向けた動きが進む中、スピリッツ市場は拡大し、消費者の嗜好(しこう)はより冒険的になりつつある。それはスコッチにとっては、良いことでもあり悪いことでもある。

「私が1990年代に業界に入ったときは、みな忠実な飲み方をしたものだ。ウイスキー好きならウイスキーだけ、ジン好きならジンだけ飲んだ」と、独立系ウイスキーメーカー「ゴードン&マクファイル」のユアン・マッキントッシュ専務は言う。

「そういった忠誠心ある飲み方をする人はもういない。みな新しいものを試したがる」と、マッキントッシュ氏はスペイサイドにある1898年築の同社の蒸留所で語った。

シングルモルトウイスキーの輸出は、ユニークな酒の需要に後押しされ、2017年は14.2%増加した。蒸留所にはこの5年で投資が流れ込み、ブレグジットの影響は感じられない。

2012年以降、スコットランドの蒸留施設に約10億ポンドを投入したディアジオは、熱心なファンの間でカルト的な人気を誇る、ポートエレンとブローラの2カ所の蒸留所を復活させる。ペルノーは今年、ダンバートンのスコッチのボトリング施設に4000万ポンドを投じる予定だ。スコットランドでは2013年以降、小規模蒸留所が10軒以上設立されている。

イアン・マクロード蒸留所は、1本当たり最高2500ポンドの値がつくこともあるコレクター憧れのローズバンク蒸留所を2017年10月に買収した。売上高6500万ポンドのマクロードは、在庫ウイスキーを担保とした8000万ポンドの融資枠を獲得しており、さらなる拡大を目指している。

「ブレグジットは、ローズバンク買収の決断には影響しなかった。(ブレグジットの影響は)議論はしたが、退けた」と、マクロード社の英国ディレクター、ニール・ボイド氏は言う。

1993年に閉鎖されたローズバンク蒸留所は、2019年に再開される予定。エディンバラとグラスゴーの間に位置する、同蒸留所のあるフォルカークは観光客も増加中で、ビジターセンターも開設される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ダウ・S&P日中最高値更新、トランプ氏の財務長官指

ビジネス

S&P500の25年見通し6600に引き上げ=バー

ワールド

イスラエル、ヒズボラ停戦承認巡り26日閣議 合意間

ワールド

独社民党、ショルツ氏を首相候補指名 全会一致で決定
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 3
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 4
    テイラー・スウィフトの脚は、なぜあんなに光ってい…
  • 5
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 6
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 7
    日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心...エヌビ…
  • 8
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 9
    またトランプへの過小評価...アメリカ世論調査の解け…
  • 10
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 9
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 10
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中