スコッチウイスキー、ブレグジットで「うまみ」増すか?
世界のスコッチの37%を生産するディアジオは、英国が韓国や南アフリカといった国との間で、有利なEUの貿易合意をそのまま応用した協定を締結することを熱望している。
ディアジオのアイバン・メネゼスCEOは、年間の売上高が120億ポンドの世界企業にとって、ブレグジットの混乱やコストは「大きなものではない」と見ているという。同CEOによると、ディアジオと業界は、懸案解消に向けて英政府と「非常に力強く」協力しているという。
「1ケースのジョニーウォーカーを欧州に持ち込んだり、アイルランドとの境界を越えるのを遅延させたりするようなことは望んでいない」と、メネゼス氏は1月のロンドンでの記者会見で述べた。
冒険の精神
ブレグジットに向けた動きが進む中、スピリッツ市場は拡大し、消費者の嗜好(しこう)はより冒険的になりつつある。それはスコッチにとっては、良いことでもあり悪いことでもある。
「私が1990年代に業界に入ったときは、みな忠実な飲み方をしたものだ。ウイスキー好きならウイスキーだけ、ジン好きならジンだけ飲んだ」と、独立系ウイスキーメーカー「ゴードン&マクファイル」のユアン・マッキントッシュ専務は言う。
「そういった忠誠心ある飲み方をする人はもういない。みな新しいものを試したがる」と、マッキントッシュ氏はスペイサイドにある1898年築の同社の蒸留所で語った。
シングルモルトウイスキーの輸出は、ユニークな酒の需要に後押しされ、2017年は14.2%増加した。蒸留所にはこの5年で投資が流れ込み、ブレグジットの影響は感じられない。
2012年以降、スコットランドの蒸留施設に約10億ポンドを投入したディアジオは、熱心なファンの間でカルト的な人気を誇る、ポートエレンとブローラの2カ所の蒸留所を復活させる。ペルノーは今年、ダンバートンのスコッチのボトリング施設に4000万ポンドを投じる予定だ。スコットランドでは2013年以降、小規模蒸留所が10軒以上設立されている。
イアン・マクロード蒸留所は、1本当たり最高2500ポンドの値がつくこともあるコレクター憧れのローズバンク蒸留所を2017年10月に買収した。売上高6500万ポンドのマクロードは、在庫ウイスキーを担保とした8000万ポンドの融資枠を獲得しており、さらなる拡大を目指している。
「ブレグジットは、ローズバンク買収の決断には影響しなかった。(ブレグジットの影響は)議論はしたが、退けた」と、マクロード社の英国ディレクター、ニール・ボイド氏は言う。
1993年に閉鎖されたローズバンク蒸留所は、2019年に再開される予定。エディンバラとグラスゴーの間に位置する、同蒸留所のあるフォルカークは観光客も増加中で、ビジターセンターも開設される。