スコッチウイスキー、ブレグジットで「うまみ」増すか?
2月21日、スコッチウイスキーのメーカーは、英国内で最も強硬に欧州連合(EU)残留を主張した業界の1つだ。写真はフォルカークのローズバンク蒸留所。2018年1月撮影(2018年 ロイター/Russell Cheyne)
スコッチウイスキーのメーカーは、英国内で最も強硬に欧州連合(EU)残留を主張した業界の1つだ。だがもし離脱しかないのなら、完全離脱の方が望ましいと主張している。
すでに輸送やロジスティクス面での対応準備に追われている同業界としては、英国が世界最大の貿易圏であるEUを離脱しても、EU規制に発言権を持ちつつ2国間貿易協定を交渉する権利も得られるならば、EU単一市場と関税同盟に喜んで残るという。
もしそれがかなわないなら、何の合意もなく離脱して世界貿易機構(WTO)のルールに従った方が良いと、スコッチウイスキー協会(SWA)のカレン・ベッツ会長は言う。WTOのルールによると、スコットランドからEUへの輸出関税はゼロになる。
「よく考えてみれば、単一市場に残ってEUの規制に縛られつつも発言力はないという状態は、リスクが大きい」と、ベッツ氏は言う。ただ、英国とEUとの交渉が続く間は、柔軟な考え方を続けるつもりだと付け加えた。
業界の姿勢には重みがある。スコッチウイスキーの輸出は、2017年は43億6000万ポンド(約6500億円)と、英国の全食品と飲料品輸出額の5分の1以上を占める。また、4万人の雇用を抱えている。
同業界の立場は、ある意味ユニークだ。
WTOの関税は有利になる。同関税は、ほぼ全てのスピリッツが対象だ。
一方、スコッチウイスキーのサプライチェーンはほぼ英国内で完結しているものの、生産量の9割は輸出されている。ブレグジット(EU離脱)決定後のポンド安は、大きな恩恵となった。
スコットランド外での製造を認めない英国法に守られたスコッチウイスキーは、蒸留酒大手の英ディアジオや仏ペルノ・リカールなどの多国籍企業が幅を利かせており、過去数百年間輸出されてきた。蒸留所は国境を越えた取引に精通しており、ロジスティクス的な問題やコストを吸収できる。
いま業界が求めているのは、英国のEU離脱の条件と、準備にどれほどの時間があるかが明確にされることだ。
「手元に配られたカードで対応するが、そのカードが何かを知りたい」と、ベッツ氏は言う。