スコッチウイスキー、ブレグジットで「うまみ」増すか?
リスク
大きな懸案は、EU離脱を問う国民投票の前に合意されていた、非EU国との間の通商用ITシステムの変更が、どうEUへの輸送に影響するか、だ。この懸案は、英国の他の輸出業界も共有している。
2019年3月29日のブレグジット後の移行期間が短すぎれば、その数カ月前に導入される予定の新ITシステムを、EU向けを含めたすべての輸出で使わなければならない事態も想定される。その場合、同システムが年間扱う申告件数は現在の5500万件から2億5500万件に増えると、英政府はみている。新システムは、エラーを起こさずに稼働していなければならない。
ウイスキーメーカーは、通関手続きの遅れが売り上げやコストに影響する事態に備え、代替ルートを検討するなどの緊急対応策を練っている。
仮にボトルネックがあれば、生産者は、地域ごとに在庫を用意することもできると、コンサル会社ムーア・スティーブンスで食品アドバイザー部門を担当するダンカン・スウィフト氏は言う。腐らないウイスキーの特質を生かした対応だ。
クラン・キャンベルやバランタインといったウイスキーブランドで仏市場の20%を占めるペルノ・リカールは、すでに世界85カ所に流通センターを抱えており、欧州でさらに拠点を増やすことは容易だと、アレクサンドル・リカール最高経営責任者(CEO)は今月ロイターに語った。今後数カ月の対応が鍵を握るという。
「われわれのビジネスに極めて重要なのは、準備を整え、速やかに適応することだ」とリカール氏は話した。
チャンス
スコッチウイスキーの成長機会は、ほとんど南米やアジア、米国といったEU以外の地域にある。これは、英政府が交渉する2国間貿易協定が重要になることを意味する。
2016年にシングルモルトのスコッチが最も伸びた市場は、世界最大のウイスキー市場でもある米国だった。だが、もともとの消費量はずっと少ないながらも、中国とインドの市場も急成長している。
インドでは、スコッチ全体の売り上げが2016年に14%増加。150%の関税にもかかわらず、シングルモルトの売り上げは31%伸びた。
「(インドは)世界最大のウイスキー市場だが、スコッチの消費量は1%でしかない」と、ディアジオの渉外担当者ダン・モブリー氏は話す。
とはいえ、貿易協定では国の経済力がモノを言う。英国経済の規模はEU全体の約15%だ。貿易協定は、交渉に時間がかかることでも知られる。インドとEUの交渉は、10年かけた交渉の後に暗礁に乗り上げている。
「英印自由貿易協定を素早く締結できると考える理由はどこにもない」と、サセックス大学のインゴ・ボルヘルト上級講師は言う。