最新記事

トランプファミリー

イヴァンカとパナマ逃亡者──トランプ一家の不動産ビジネスに潜む闇

2017年11月29日(水)12時15分

しかし、事前販売キャンペーンで集まった資金すべてが同プロジェクトの資金に回ったわけではない。

オーシャン・クラブや他の開発において、ノゲイラ被告は集まった手付金のすべてをプロジェクトのデベロッパーに回さなかったり、同じマンションの部屋を重複して販売することもあったりしたと、ロイターが取材したノゲイラの元ビジネスパートナーもしくは従業員9人は主張する。その結果、プロジェクト完成時に一部の顧客は不動産の所有を明確に主張することができなかった。

正確にどれくらいの戸数が重複して販売されていたのかは定かではない。前出のミハイロフ氏によれば、彼女が販売したトランプタワーの80戸のうち最大10戸はノゲイラによって他の顧客に販売されていたという。

パナマでの訴訟やロイターが確認した他の告訴状には、トランプ・プロジェクトや同国での他の建設プロジェクトにおいて、ノゲイラ被告による詐欺容疑が少なくとも6件記録されている。告訴状のうち2つは、世界の富豪や権力者が租税回避地を利用している実態を暴露したパナマ文書に含まれていた。

トランプ・オーシャン・クラブ建設プロジェクトにおける詐欺容疑を含むノゲイラに対する告訴状は、パナマで4件の刑事事件に発展し、ノゲイラは2009年5月、詐欺容疑で逮捕された。

重複販売については、建物設計書の変更あるいは事務的なミスが原因だと、ノゲイラ被告は主張。意図的にしたことではないとしている。

保釈金を支払って釈放された後、ノゲイラは2012年、パナマ出国を禁じられていたにもかかわらず、母国ブラジルに帰国。その後、再び移動している。サンパウロのカレン・カーン連邦検事は、ノゲイラ被告は国際的なマネーロンダリングの捜査対象となっていることを明らかにした。パナマから大手数行を経由した送金が同氏の口座に振り込まれていたことが発端となったという。

現在の居場所を明らかにすることは拒否したが、ノゲイラ被告は11月13日、ロイターとNBCニュースと中立的な場所で会うことに同意した。面会場所を公表しないことが条件だった。パナマで自身に逮捕状が出されたことで目立つ存在になったと語る同被告は、「言うまでもなく、私は現在、司法当局から逃亡者扱いされてもおかしくない。だが物事には必ず2つの側面がある」と語った。

投資家にとっては、詐欺容疑ばかりが痛手となったわけではない。2008年に世界的に不動産バブルがはじけてからは、トランプ氏の名を冠したパナマ事業からすばやく利益を得る機会も消えた。

2011年にトランプ・オーシャン・クラブ建設プロジェクトが完了するまでに、多くの投資家は残高70%を支払うよりも、手付金を取り戻してそれを失った。カフィフ氏の企業ニューランドがデフォルトに陥り、債務が再編されたため、債券保有者も損害を受けた。

しかし、それでも利益を得ている人物が1人いた。現在のドナルド・トランプ大統領だ。

債券目論見書に詳しく記載されているトランプ氏が結んだライセンス契約の下では、投資家がどれだけ損失を被ろうと、トランプ氏は支払いを受け取ることが保証されていた。

ニューランドが破綻した2013年の裁判所記録によると、トランプ氏は減額に同意したが、それでもライセンス料として3000万─5000万ドルを手中に収めた。

(Ned Parker、Stephen Grey、Stefanie Eschenbacher、RomanAnin、Brad Brooks、Christine Murray記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

[パナマ市/トロント 17日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米韓首脳が電話会談、関税など協議 トランプ氏「状況

ワールド

中国の対抗措置は大きな間違い、「負け戦になる」=米

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=大幅反発、ダウ1100ドル

ビジネス

ECBなど欧州当局、金融機関や債券市場の監視強化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 7
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 8
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 9
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡…
  • 10
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中