最新記事

トランプファミリー

イヴァンカとパナマ逃亡者──トランプ一家の不動産ビジネスに潜む闇

2017年11月29日(水)12時15分

今回のプロジェクトの債券目論見書によると、トランプ氏は同プロジェクトに名前を冠することで最大7500万ドル(約84億円)を手にした。ただ、この建物の運営に関与しておらず、他の関係者に対してデュー・デリジェンス(資産査定)を行う直接的な法的義務はない。

とはいえ、そこでの収入源を確認するためにトランプ氏が取った措置について疑問が投げかけられていると一部の法律専門家は指摘する。

パナマは「汚職率が非常に高いと見られている」ため、当地でビジネスに従事する人は誰もが、自身の事業に関わる人々についてデュー・デリジェンスを実施すべきだと、かつてマンハッタンの地方検事補やJPモルガンのグローバル反汚職プログラムの責任者を務めたアーサー・ミドルミス氏は主張する。

そうしないのであれば、不正に目をつぶったとして米国の法律に違反するリスクを負う可能性がある、と同氏は言う。

米財務省で立法問題担当次官を務め、現在はノートルダム大学の法律学教授であるジミー・グルール氏も、この意見に賛同する。ビジネスでは、単に倫理上の問題だとしても「犯罪とつながっている可能性のある人物」との関わりは回避すべきだ、と同氏は述べた。

ロイターは、オーシャン・クラブのプロジェクトに関連して、トランプ氏がどのようなデュー・デリジェンスを行ったか確認できなかった。

トランプ・オーガニゼーションのガーテン氏は、プロジェクトにおける同社の役割について「自社ブランドのライセンスビジネスとマネジメントサービスを提供することに常に限定されていた。弊社はオーナーでもデベロッパーでもなく、同不動産におけるマンション販売に一切関与しなかった」と語った。

同社は、ノゲイラ被告と「いかなる契約関係あるいは大きな取引関係を結んだことは一度もない」と、ガーテン氏は述べた。

ロイターの取材に応じたノゲイラの元ビジネスパートナーや従業員9人は、自分たちや顧客をだましたとして同被告を非難。そのうち2人はノゲイラを相手取り、法的手段に訴えたが、いまだ審理中だ。

長時間にわたるインタビューの中で、ノゲイラ被告はトランプ一家との接触やオーシャン・クラブ建設プロジェクトにおける自らの役割について説明した。同プロジェクトが終わりに近づいたころになって、自身のパートナーや投資家の一部が犯罪者であり、その中に「ロシア人マフィア」とのつながりがある人たちもいたことを知ったと語った。

ノゲイラ被告はまた、同プロジェクトを通じて、違法なカネと分かっていながらロンダリングしたことはないと述べた上で、その後別件で汚職にまみれたパナマ当局者らのために資金洗浄を行ったことは認めた。

トランプ・オーシャン・クラブの建設プロジェクトにどれくらいの洗浄資金が流入したかは定かではない。

トランプ氏が自身の名前の使用を許可した他の不動産プロジェクトの資金の出所については今年3月、ロイターが検証した結果、ロシアのパスポートや住所を有する少なくとも個人63人が、米フロリダ州南部の豪華なトランプタワー7棟で9840万ドル相当の物件を購入していたことが明らかとなった。買い手には、政界にコネのあるビジネスマンやロシア権力構造の第2、3層にいる人物たちが含まれていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国債価格が上昇、財務長官にベッセント氏指名で

ワールド

プラスチック条約、最後の政府間議始まる 米の姿勢変

ビジネス

米財務長官指名のベッセント氏、減税と関税が優先事項

ワールド

新たな貿易戦争なら欧米双方に打撃、独連銀総裁が米関
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中