イヴァンカとパナマ逃亡者──トランプ一家の不動産ビジネスに潜む闇
スペイン語のテレビチャンネル「ユニビジョン」が放送した2011年の報道によると、トランプ・プロジェクトにおけるノゲイラ被告の役割を初めて指摘したとき、エリック・トランプ氏は、無関係のセールスマンだと答えている。
同報道に対するエリック氏のコメントについて、トランプ・オーガニゼーションに今月尋ねてみたところ、同社はノゲイラと関係があったことなど一度もなく、彼を認識していないと回答した。
第3者であるにもかかわらず、ノゲイラ被告と彼のパートナーたちがトランプ・プロジェクトの成功に大きな役割を担っていたことが、彼が経営していたホームズ社の元幹部や、デベロッパー、投資家、弁護士へのインタビュー、そしてパナマの企業記録や他の公的文書の分析から明らかとなった。
デベロッパーである「ニューランド」の社長であり共同創設者であるカフィフ氏は、正確な数は分からないが、ノゲイラ被告が(666戸のうち)最大300戸を売り上げた可能性があると言う。「彼と仕事をしようと、皆が列をなしていた。当時、町で一番の不動産業者だった」
ノゲイラ被告のホームズ社は、ロシアですぐに売れることを発見した。「ロシア人は目立ちたがりだ」と語るのは、何度かモスクワに営業出張に行ったカフィフ氏だ。「彼らにとって、『トランプ』は(不動産ブランドの)ベントレーだ」
カナダに移住したロシア人のエレノラ・ミハイロフ氏はノゲイラ被告の国際販売担当ディレクターだった。彼女によれば、オーシャン・クラブ建設プロジェクトの投資家はマンション1戸当たり10%の前金を支払うことを求められた。マンションの平均価格は約35万ドルだったと彼女は言う。
債券目論見書によると、買い手は1年以内に計30%支払わなければならなかった。そしてホームズ社は、顧客がカフィフ氏の会社ニューランドと事前契約を結べるよう、パナマで企業を設立することで投資を組織化した。
2016年と翌17年、「トランプ」と「オーシャン」という言葉をさまざまに組み合わせた少なくとも131の持ち株会社が(例えば「トランプ・オーシャン1806投資会社」)事前契約のために登録されていた。そのほとんどはホームズ社のグループによるものだ。
多くの場合、買い手の身元は明らかにされていない。ノゲイラ被告とホームズ社の関係者らによると、当時のパナマの法律下では、所有者の身元を確認する義務はなかった。
だが、トランプ・オーシャンの投資会社4社のディレクターとして警察記録に記載されていたのは、2007年にウクライナ首都キエフのホームズ不動産代表を務めたイゴール・アノポルスキーだ。彼は同年3月、人身売買の疑いで逮捕された。
1年後に保釈されたが、2013年に再逮捕された。ウクライナの裁判所は翌年、同被告に対し、トランプ・プロジェクトとは関係ない、人身売買と偽造の罪で懲役5年・執行猶予3年の判決を言い渡した。
ノゲイラ失墜の引き金となったのは、デービッド・ムルシア・グズマンというコロンビア出身のビジネスマンだった。ムルシアは2008年11月、マネーロンダリング容疑で、最初はコロンビア、その後に米国で起訴された。ムルシア被告は麻薬マネー洗浄の共謀罪で9年の実刑判決を受けた。
ムルシアの起訴から数日内にノゲイラに注目が集まった。2人の弁護士だったロニエル・オルティス氏によると、ノゲイラが自分の名義でマンションを購入することでムルシアに資金洗浄しないかと持ちかけていたという。