ヨーロッパを追われアメリカに逃れるロマの人々
かくいうアメリカも亡命資格を得るのが難しいことで有名だし、そもそもロマはアメリカや国連が定めた規則で難民の認定基準を満たしていない。ロマがアメリカへの亡命に成功したケースをいくつか見てきたブルックス曰く、「大量の証拠書類を提出しなければならないうえ、認定される確率は低い」。彼女は今後、貧しいが紛争国の出身ではないロマがアメリカで「経済難民」として扱われ、難民認定がさらに難しくなる事態を懸念している。
失われた希望
ジャバノビッチは、ロマ人に経済移民というレッテルを貼るのは間違いだと言った。「彼らは何世紀にもわたりヨーロッパで貧しい生活を送ってきた。一番問題なのは、ロマ人がもはや希望を持てないことだ」
EUにはロマ人の福祉の充実に役立てるために割り当てられた資金があるのに、有効活用されていないことにも言及した。
「2003~04年にかけて、我々の団体がロマの権利拡大のために複数のプロジェクトを立ち上げたときは、現在と比べて集まった資金こそ少なかったが、政治的な機運は高まっていた。今はその逆で、資金は足りても政治的な盛り上がりに欠けている」
アメリカを目指す理由について、アメリカがよりオープンな国で、ロマであろうと目立つことなく溶け込みやすい印象があるからだと専門家は見ている。ほとんどのアメリカ人はロマが迫害されてきた少数民族であることや、「ジプシー」という言葉が蔑称だということすら知らない。
【参考記事】ヨーロッパの「ロマ差別問題」に鈍感なアメリカ
今年の米大統領選挙を見ても明らかなように、アメリカは国内で人種的なマイノリティをめぐる問題を抱えている。たとえロマ人がアメリカで居住権を得られても、移住する地域や肌の色によっては、人種差別や排外主義に直面せざるを得ないのが現状だ。