日本にもスタートアップの時代がやって来る
いま、野菜とか体に入るものについては、どこでどう作られたのかを気にする人が多くなっています。だから、毎日12時間も着ている洋服について、その生産背景とか、それが作られた経緯に、もっとリスペクトするべきだと思うんです。
今日、僕が着ている服はすべて、どこのだれが作ってくれたかを知っています。そうすると、他の服に比べて、ものすごく愛着が湧くんです。自分だけのオリジナルですし、どんどん好きになる。
「コミュニケーション時代のメーカー」
加谷 森さんがライフスタイルデザインを起業したのが2年前で、中澤さんのUPQはまだ半年ですが、おそらくおふたりのビジネスは、3年前なら成立し得なかったという気がするんです。長沼さんからご覧になって、どういう変化が起こっていると思われますか?
長沼 まさにいま、社会が変わってきていて、これまでの市場シェアを奪い合う時代から、人々のマインドのシェアをどう取っていくかを問われる時代になっています。それがつまり、オーダーメイドやワン・プロダクトが求められる社会なんだと思いますが、そこには当然、デザイン性やストーリーが問われてくるわけです。
森 僕が明確に思っているのは、過去5年とか10年で、消費者の意識が圧倒的に変わってきていることです。情報化社会になって、売り手よりも買い手のほうが多く情報をもっています。
これまではメディアから情報をもらって流行を知って洋服を選んでいたのが、いまは自分がメディアを選ぶ時代だから、自分で情報を集めることができるようになった。その結果として、モノを選ぶハードルが高くなっているんだと思います。本当に納得しないとお金を払ってくれない。
オーダーメイドもそれにつながってきます。一点一点、生地やデザインから自分で選んで、もちろんサイズも自分だけのものだし、そうやって心から納得できるものにお金を使いたい、と思う人が増えているんじゃないでしょうか。
加谷 中澤さんは、オーダーメイド家電というようなビジョンがあったりするんですか?
中澤 それは考えていないです。数が少ないと言っても、家電はやっぱり大量生産品です。200台だろうが1万台だろうが、型のとおりにまったく同じものを作るわけですから。
私は、お客さんに製品を面白がってもらうことに頭を使っています。UPQの商品は言ってみれば嗜好品で、なくてもだれも困らない。だけど、これにお金を払ってもいいなって思ってもらうためには、買ったときにだれかに自慢できればいいんじゃないか、って考えているんです。