日本にもスタートアップの時代がやって来る
そうしたら、ここ1年半くらいで、個人でモノづくりをできる環境が整ってきたんです。スタートアップを応援する仕組みとか、商品を販売できる環境とか。それで、もしかしたら私のやりたいことができるかも、と思ったわけです。
だから、起業したいとか、ベンチャーという意識はなくて、ただただ、先輩たちが教えてくれた楽しいモノづくりを、私たちの世代の形で実現したかったんです。
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加谷 上の世代とか、かつての時代に対する「悔しさ」が、ひとり家電メーカーへの原動力になったわけですね。森さんはどういう経緯で、カスタムオーダーのファッション通販サイトというビジネスを思いついたのですか?
森 僕は地元が岡山なんですが、岡山って縫製が盛んなんです。ジーンズとか、制服とか。家族や親戚や友達のお母さんが繊維メーカーや縫製メーカーで働いているっていう環境でした。
ただ、僕が中学・高校と進んでいくうちに、どんどん工場がなくなっていったんです。僕の叔父もボブソンに勤めていたんですが、工場が閉鎖になって、希望退職という形でしたが、職を失ってしまいました。
そのときに、僕は「なんでだろう?」って思ったんです。だって、だれだってジーンズを履くじゃないですか。履く人は減っていないのに、なんで工場が閉鎖されてしまうんだろうって。
大学を卒業して、アパレルの仕事をするようになってわかったのは、業界のいびつな構造です。中間流通がものすごく多いんです。まず商社があって、卸会社も第一卸、第二卸とあって......何十年もそういった構造のままなんですよ。
加谷 確かに、アパレルは複雑そうですもんね。
森 めちゃくちゃ複雑です。お客さんが払ったお金のうちの、ほんのちょっとしか製造現場に下りてこないんです。ものすごくマージンが低い。要するに、現場が儲からない仕組みなんです。だから、現場をやっていた岡山の人たちが苦しい想いをしていたんだなって気づいたんです。
いまはインターネットの時代なので、ネットを活用して、工場と直接やりとりしたいなって、シンプルに思ったわけです。
加谷 インターネットを活用する大きなメリットとして、"中抜き"ということがよく言われますが、まさにそれをやってのけたわけですね。
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森 オーダーメイドという発想にいたった理由はもうひとつあって、それは、僕たちは毎日ふつうに洋服を着ていますけど、たとえば加谷さん、今日来ていらっしゃる服を、どこのだれが作ったかってわかりますか?
加谷 いや~、わからないなぁ。
森 そうなんですよ。でも、それって変だなって思ったんです。