風土改革からSDGs推進へ、国内から海外へ...次々に可能性を広げるニチレイフーズ「ハミダス活動」とは何か
経営トップの想いや社内情報を共有する「動画メッセージ」は配信回数が330回を超えている
<従業員同士のコミュニケーション活性化を目的としていた活動が、驚くべき広がりを見せ、食育やフードロス削減につながっている>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや製品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えのもと、ニューズウィーク日本版はこの春、「SDGsアワード」を立ち上げました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
冷凍食品大手の株式会社ニチレイフーズは、食育やフードロス削減など幅広い社会貢献活動を展開している。これらの取り組みの共通点は、意図せずに始まったということ。その原点には、同社の「ハミダス活動」がある。
担当領域を超えて自発的に取り組むカルチャー
電通が2018年から毎年実施している「SDGsに関する生活者調査」で、6回目となる2023年、初めてSDGsの認知率が9割を上回った。テーマごとに見ると、食品ロス(92.6%)、ジェンダー平等(90.2%)、再生可能エネルギー(90.1%)の順に認知度が高い。
SDGsには17の目標が定められており、比較的想起されやすいテーマに注目が集まる一方で、あまり認識されない項目もある。例えば、目標8の「働きがいも経済成長も」は、個人でも何らかのアクションを起こせる食や環境に比べると目立たない。働きがいのある環境は、会社の風土や体制に依るところが大きいことも要因としてあるかもしれない。
風土改革を実施したことで生まれ変わった企業の例として、株式会社ニチレイフーズが注目に値するだろう。同社の変革を象徴するのが「ハミダス活動」だ。社員が自分の担当領域を超えて(=はみ出して)自発的に取り組むカルチャーを社内に根付かせるのに役立った。
「明るく、元気で、風通しのよい企業風土を目指して始めたハミダス活動は、従業員が自ら考え、自ら行動することを支援し、個性や能力を存分に発揮する取り組みです」と語るのは、サステナビリティ推進部の佐藤友信氏。
「この活動は2011年、当時社長に就任した池田泰弘の発案で始まりました。縦割りで連携の悪い組織体制や、業績が悪く閉塞感の漂う社内の雰囲気を払拭したいという思いからスタートしています」
根幹をなす活動として、経営者と10人前後の従業員が2時間かけて対話する「あぐら」と、経営トップの想いや社内情報を共有する「動画メッセージ」がある。
「あぐら」はこれまでに700回以上開催され、参加者は延べ7000人。一方、トップメッセージとして始まった「動画メッセージ」も今では従業員参加型となり、配信回数は330回を超えた。各部署から選出された、活動を推進する「ハミダスフレンズ」は延べ800人超。社長直轄の専門部署「ハミダス推進部」が事務局を務め、活動を促進してきた。