「NFTアート」を購入しカーボンオフセットに貢献? 米スタートアップ企業が展開
環境活動は「手軽さ、手頃な価格、文化的・社会的な魅力」で促進
エコサピエンスは、先のケーン氏とニハール・ニーラカンティ氏が共同設立した。起業のアイデアは、ベンチャーキャピタルに勤務していたニーラカンティ氏にひらめいた。
「2020年10月のことだったと思います。自宅で朝起きて、景色を眺めて考えました。気候変動はもちろん非常に広い分野に渡るとはいえ、気候変動の取り組みはなぜこんなに大変なのか、消費者としてリサイクルやコンポストといった活動以外に何ができるのかと自問したのです。エコな商品やサービスは従来のものより費用がかかることが多く、ライフスタイルの変化も必要(概して、面倒)になるので、消費者の日々の行動にインパクトを与えることは難しいです。でも、ワンクリックで簡単にできる、経済的な魅力を高める(手頃な価格にする)、文化的・社会的な特典を付けるという3つのポイントをクリアできれば、気候変動の取り組みは魅力的になるはずだと思いました」
「NFTは美しく、クリエイティブという文化的な面があり、コミュニティーを作って他者と繋がることができます。人々の行動に変化を起こすには、Web3やNFTが最良の方法だと思ったのです」(暗号通貨やブロックチェーン、NFTなど次世代のインターネット(Web3)について情報を提供するサイト「クリプト・アルトゥルーイズム」のポッドキャスト第89回より)
エコサピエンスという社名は、ケーン氏のアイデアだ。猿人からホモサピエンスへの道のりが大革命だったように、同社のNFTアートがリアルな世界で革命を起こし、人々が環境保護に関して大きく変化するようにとの願いを込めたという(上記ポッドキャストより)。
本格販売は、これから
今回のNFTアートのリリースは、最初の小さな一歩だ。販売期間終了までに何体が最終レベルに達するか、購入者が惹かれる点はアート性かインパクトの強さかなどを評価し、今後のサービスに生かす。将来は、企業向けのNFTアート販売や環境をテーマにしたアート展示など、様々なアイデアを形にしていく。
日本でも環境問題への関心は随分高まってきた。しかし、最近の調査では、エコや環境問題に「関心がある」と答えた人は28%で、具体的な行動はしていない「やや関心がある」人は56%、ノーエコ派は16%という結果もあり、多くの人が日常的にエコ行動をしている状況とは言い難い。環境問題と結びついたNFTアートが広まれば、そのほかのエコ行動の促進にもつながっていくかもしれない。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com