第2波でコロナ鬱、コロナ疲れに変化、日本独自のストレスも
KIM KYUNG HOON-REUTERS
<会社員、大学生、高校生、医療従事者......。長期化が現実になり、自粛と分断と日本型社会の中、メンタルヘルスの問題が深刻化している。バーンアウト(燃え尽き)を防ぐにはどうすればいいのか、精神科医がアドバイスする。本誌「コロナストレス 長期化の処方箋」特集より>
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の第2波到来が、既に現実のものとなってきている。増加する一方の患者数に加え、はっきりしない政府・自治体の政策に、不安を感じている人がほとんどだろう。
4月7日に政府より緊急事態宣言が発令される前後から、自粛に伴う精神的ストレスを意味する「コロナ鬱」「コロナ疲れ」という用語をよく目にするようになった。
ただ、4~5月の緊急事態宣言のときに比べて、第2波が襲来し長期化が現実のものとなった現在では、「コロナ鬱」「コロナ疲れ」の性質が変化してきているように思える。諸外国とは異なる、日本ならではのCOVID-19と向き合う特徴も、徐々にはっきりしてきた。本稿では、長期化するCOVID-19に伴い初期の頃とは変化してきたメンタルヘルス問題を、私のクリニックでの診療や大学での学生相談内容に基づいて、日本特有の特徴や事情を絡めて考えてみたい。
メディアで毎日のように報道される患者数は、4~5月の緊急事態宣言のときよりも多い。不安を感じる一方で、COVID-19への油断、不安に対する慣れ、COVID-19以前の状態に戻りたいという欲求が生じていないと言えば嘘になるだろう。また、緊急事態宣言ではあれだけ我慢したのに、また感染拡大かという怒り、やるせなさは、理解できる心情である。
仕事に関しては、会社員ならばリモートワークのストレスがあるだろう。一橋大学イノベーション研究センターが5月に発表した「新型コロナウイルス感染症への組織対応に関する緊急調査」でも、約60%の企業が、「仕事上のストレスが増えた」と回答している。会社・プライベートの境界線がなくなったための新たな問題が生じている。平日休日関係なく一日中パソコンの前で終わりのない作業を強いられ抑鬱的となる、リモートワークでの「過重負荷」の症例も経験した。
オンラインでは、内容によっては細やかな作業のやり取りがどうしてもうまくいかないことも多い。オンラインは便利に見えるが、オフィスで直接質問や相談する機会がないことで、仕事の遅延や不備をきたし、精神的負荷をかえって強くしている場合もあるのではないだろうか。
会社経営や自営業、特にレジャーや外食関連に携わる人は、破壊的な収益減少を経験し、今後も厳しい対応を迫られることは間違いない。行政の財政援助も枯渇してきている。アメリカではCOVID-19による経済死を「絶望の死」とし、15万人に上るとする推計もある。経済不況は、2019年には2万人を切るまでに減少した自殺者数を、再度増加させる要因となりかねない。