最新記事
インタビュー

蟹江憲史教授が国連から任命されて書いた、SDGs「2030年まであと7年」の現実と希望

2023年12月21日(木)17時25分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)

EV

Sayouna-shutterstock

世間の「SDGs=気候変動と脱炭素」認識は問題ない?

――シナリオはシナリオで必要だが、それに囚われ過ぎてはいけない、と。

シナリオを超えるアクションが今、求められている。

実際、変革のシーズ(タネ)はたくさんある。それらのシーズを伸ばすための仕組み、政策面でのサポートが必要。価値観の変化もまだ起こっていない。GSDRで「Science for Accelerating Transformations to Sustainable Development(持続可能な開発への変革を加速させる科学)」と我々は言っているのだけれど、アクセラレーション(加速)のためのツールが、いま最も必要とされている。

例えば、技術を共有するとか、マーケットの基盤を作るとか、国際的に標準化していくこと。国際的な標準化は日本にいちばん欠けている視点で、むしろ世界に打って出ていかないと、これまでのようにはいかない。今はヨーロッパが国際標準をどんどん作っていっている。

――SDGsに関するルールは、かなりヨーロッパ主導になっているイメージがある。

そうです。そうなると、それらに追いつかなきゃ、合わせなきゃとなるので、日本企業が自分たちの特徴を出すのが難しくなってくる。だから、そこに気づいて、日本も標準化をしていかなければならない。サステナビリティはまだ標準化されていないものも多いので、日本発でそこを取っていこうというマインドセットが重要だ。

――GSDRに話を戻すと、そもそも2030年までにSDGsをすべて達成するのは無理じゃないかという空気が以前からあったのではと思う。そんな中で調査をして、予想より後退した分野や、逆に進展した分野はどこだったのか。

貧困に対するパンデミックの影響が予想以上に大きく、貧困の分野は完全に後退したと言っていい。新型コロナは健康に関わるものだが、お金にも響いた。SDGsはすべてつながっているものだと我々は言っているが、それがまさに表に出た。

逆に良い面を言えば、パンデミックによりネット社会が充実することになり、遠隔で、インターネットで、いろいろなことができるようになった。インターネットのインフラ整備が進んだので、もし再びパンデミックが襲ってきても、今度はそのインパクトを抑えられるかもしれない。

――デジタル化がSDGsのさまざまな目標達成にもプラスの効果をもたらす?

これから先を考えると、デジタルのテクノロジーをどうやってサステナビリティの変化につなげていけるかが、大きなカギになると思う。

自動車
DEFENDERとの旅はついに沖縄へ! 山陽・山陰、東九州の歴史文化と大自然、そして沖縄の美しい海を探訪するロングトリップ
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中