最新記事
インタビュー

蟹江憲史教授が国連から任命されて書いた、SDGs「2030年まであと7年」の現実と希望

2023年12月21日(木)17時25分
森田優介(ニューズウィーク日本版デジタル編集長)

蟹江憲史

Photo:遠藤 宏

――今回のGSDR発表時に、蟹江さんは「ほぼすべての目標で、2030年までの達成は極めて厳しい」というコメントを出されており、実際にレポートを見ても厳しい現状が書かれている。パンデミックの影響も大きかったと思うが。

以前からSDGsの達成は難しいと言われていたが、やはりパンデミックと気候変動のインパクトが大きい。そして、戦争。ウクライナの戦争がクローズアップされがちで、今はイスラエルとパレスチナの紛争も大きくなっている。パンデミック、気候変動、戦争。この3つの影響が大きかった。

ただ、これらは今後も継続的に出てくる可能性が高い課題なので、それらへの対処、つまりレジリエントな(強靱な)仕組み作りが重要だと思う。その意味でも、今こそSDGsが非常に大切なのだというのが、ひとつのメッセージだ。

我々が中心的な課題として出したのが、トランスフォーメーション(変革)。もともと「世界を変革しよう」と言っていたが、その視点がどうしても抜け落ちてしまいがちになるので、トランスフォーメーションをもう一度見直そう、そのモデルを示して、トランスフォーメーションは可能だ、というメッセージを出した。

例えばEVは、この5年ぐらいで急激に普及した。ノルウェーでは新車販売台数の20%がEVだったのが、今では80%がEVに置き換わっている。

(これから世界がどうなっていくかという)シナリオ研究があるが、どのシナリオを見ても、2030年までにSDGsの目標すべてが達成可能という予測はない。最も楽観的なシナリオでも2050年に可能とされているが、それも現実には難しい。

ただ、シナリオというのは、現状を反映して作っていくもの。そこに大幅な技術革新や人々の価値観の変化は考慮されていない。だからこそ、変革が必要だし、そして可能だと考えている。(EVのような)事例をたくさん作っていく、積み重ねていくことが大切だというのがGSDRのメインメッセージだ。

展覧会
奈良国立博物館 特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」   鑑賞チケット5組10名様プレゼント
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご

ワールド

中国、EU産ブランデーの反ダンピング調査を再延長
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中