蟹江憲史教授が国連から任命されて書いた、SDGs「2030年まであと7年」の現実と希望
――今回のGSDR発表時に、蟹江さんは「ほぼすべての目標で、2030年までの達成は極めて厳しい」というコメントを出されており、実際にレポートを見ても厳しい現状が書かれている。パンデミックの影響も大きかったと思うが。
以前からSDGsの達成は難しいと言われていたが、やはりパンデミックと気候変動のインパクトが大きい。そして、戦争。ウクライナの戦争がクローズアップされがちで、今はイスラエルとパレスチナの紛争も大きくなっている。パンデミック、気候変動、戦争。この3つの影響が大きかった。
ただ、これらは今後も継続的に出てくる可能性が高い課題なので、それらへの対処、つまりレジリエントな(強靱な)仕組み作りが重要だと思う。その意味でも、今こそSDGsが非常に大切なのだというのが、ひとつのメッセージだ。
我々が中心的な課題として出したのが、トランスフォーメーション(変革)。もともと「世界を変革しよう」と言っていたが、その視点がどうしても抜け落ちてしまいがちになるので、トランスフォーメーションをもう一度見直そう、そのモデルを示して、トランスフォーメーションは可能だ、というメッセージを出した。
例えばEVは、この5年ぐらいで急激に普及した。ノルウェーでは新車販売台数の20%がEVだったのが、今では80%がEVに置き換わっている。
(これから世界がどうなっていくかという)シナリオ研究があるが、どのシナリオを見ても、2030年までにSDGsの目標すべてが達成可能という予測はない。最も楽観的なシナリオでも2050年に可能とされているが、それも現実には難しい。
ただ、シナリオというのは、現状を反映して作っていくもの。そこに大幅な技術革新や人々の価値観の変化は考慮されていない。だからこそ、変革が必要だし、そして可能だと考えている。(EVのような)事例をたくさん作っていく、積み重ねていくことが大切だというのがGSDRのメインメッセージだ。
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