創造性は誰もが持つ力...発揮するために必要な「変異×適応」のプロセスとは
Eisuke Tachikawa
<創造性を発揮する方法を「生物の進化」になぞらえて論じた話題の書『進化思考』の著者・太刀川英輔氏に聞く、進化思想の体系化と想像性教育の未来>
※このインタビュー記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です。
創造性は生物の進化と同じプロセスを経て発揮される――。2021年4月に刊行された『進化思考』(海士の風)の著者、太刀川英輔さんは、創造のメカニズムを「変異×適応」という進化になぞらえて解き明かしました。本書は「山本七平賞」を受賞するなど、話題を呼んでいます。
「創造的な人になりたかった」。そう話す太刀川さんの原点、原体験は少年時代にまでさかのぼります。太刀川さんが目指す最終ゴールや次回作の構想について、インタビューで語っていただきました。
足掛け3年、スライドは500枚
── 500ページを超す大変な労作ですね。最初からこれほどのボリュームになると想定されていたのでしょうか。
2018年ごろから執筆が本格化しましたが、すでに進化思考に関するスライドが500枚ほどありました。それらを整理し、まとめ上げるとなると、300~500ページにはなると見込んでいました。結果的に相当厚くなってしまいましたね。
執筆当初、自分の中でも明解でなかった考えや未確立だった論理をクリアにしていく作業は、苦労の連続でした。章を増やしたり、順序を入れ替えたり、さまざま試行錯誤する中で、自身の思考も深まっていきました。
── 「進化思考」という考え方に至った 背景は何だったのでしょうか。
大学で建築について学び、以降デザインの道を歩んでいくことになるのですが、私が大学生だった2000年代はデザインの分野にデジタルツールが本格的に取り入れられた最初期の世代でした。誰でもデジタルツールの力で、ある程度整ったデザイン、見栄えがするデザインを作れるようになったのです。
その結果、アイデアの本質的な良しあしではなく、表現のカッコよさ、驚き、クオリティのほうがデザインを引っ張ってしまうという構図に変わってしまいました。表現の特異性が取りざたされ、本質的なアイデアの部分は問われない、見えにくくなったことは、今に至るまでデザイン業界が抱えている構造的な問題です。
そうした中、「良いアイデアは何か」「なぜこの構造になっているのか」といった問いと向き合い続けると、「言葉として伝えやすい奇抜なものは良いアイデアと認識されやすい」という不思議な現象にたどり着きました。つまりアイデアには強い言語性が備わっている。でも、この性質はなぜか進化にも同じように見られたんですね。その考え方がベースとなって「変異」の思考が生まれ、「進化思考」の半分を構成する核となっています。
『進化思考』
著者:太刀川英輔
出版社:海士の風
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