最新記事

会議

なぜ議論を「グラフィック化」すると、ヒラメキ溢れる会議になるのか?

2021年9月8日(水)06時25分
flier編集部

「なぜかあの人が苦手」から自分の多様性に気づく

── グラフィックファシリテーターの「あり方」が場に影響を与えるというのが印象的でした。「あり方」が影響するのはなぜなのでしょうか。

抽象的に聞こえるかもしれませんが、「社会」で起きていることは、「私」の中で起きていることだからです。たとえば、ファシリテーションの最中に、参加者が自分たちの発言の評価を気にしているように感じたとしましょう。それはファシリテーター自身の中にも「評価を気にしている自分」がいるから。相手は自分を映し出す鏡のようだといってもいいでしょう。

ファシリテーターに必要なのは、自分の中の多様性を認め、受け入れることです。周囲の人に「なんだか苦手だな」と感じたとします。それは自分自身の中にその苦手な特性があるのに、否定したり隠したりしようとしているから、気になってしまう。このとき、「そんな私もいるよね」と、あまり好きではない自分の居場所をつくってあげる。そうすると周囲の人に対しても許容できる度合いが大きくなって、対応できる人の種類が増えるんです。継続するにつれ、ファシリテーターの「あり方」が磨かれていきます。

── 最後に、山田さんが「あり方」を磨くうえで役立った本や影響を受けた本があれば教えてください。

最近だと、構造力学を研究してきたロバート・フリッツ氏の著書『自意識を創り出す思考』です。フリッツ氏は作曲家、映画製作者の顔をもち、『学習する組織』の著者ピーター・センゲ氏の師匠の一人でもあります。クリエイティビティを発揮したいのなら、自分が創り出したい成果、そして成果に対する今の現実にフォーカスすべきだと説いています。自身の「あり方」とクリエイティビティの発揮をリンクさせていくためのヒントを得たいという方にぜひ読んでいただきたいですね。

210904fl_ny05.jpg

自意識(アイデンティティ)と創り出す思考
著者:ロバート・フリッツ ウェイン・S・アンダーセン 田村洋一(監訳) 武富敏章(訳)
出版社:Evolving
flierで要約を読む


山田夏子(やまだ なつこ)

一般社団法人グラフィックファシリテーション協会 代表理事、株式会社しごと総合研究所代表取締役社長、システムコーチ/クリエイティブファシリテーター。武蔵野美術大学造形学部卒業。大学卒業後、クリエイターの養成学校を運営する株式会社バンタンにて、スクールディレクター、各校館長を歴任。その後、人事部教育責任者として社員・講師教育・人事制度改革に携わる。同社にて人材ビジネス部門の立ち上げ、キャリアカウンセラー、スキルUPトレーナーとして社内外での活動を行う。教育現場での経験から、人と人との関係性が個人の能力発揮に大きな影響を与えていることを実感し、その後独立。

2008年に株式会社しごと総合研究所を設立し、グラフィックファシリテーションとシステム・コーチング®を使って、組織開発やビジョン策定、リーダーシップ事業を展開する。小さな組織から大企業までのチームビルディング、教育や地域コミュニティなど様々な現場で活躍、これまでに携わった組織は950社以上。また、グラフィックファシリテーター養成講座も開催し2000人以上が受講。愛あふれるファシリテーションに参加者が涙することも多い。

2017年から2018年3月までの約1年間NHK総合『週刊ニュース深読み』にグラフィックファシリテーターとしてレギュラー出演。また、2021年5月にはNHK総合『考えると世界が変わる「みんなパスカる!」』でも、グラフィックファシリテーターとして参加し話題を呼ぶ。

監訳書に『場から未来を描き出す―対話を育む「スクライビング」5つの実践』ケルビー・バード著(英治出版)がある。

flier編集部

本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。

通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されているほか、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。

flier_logo_nwj01.jpg

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

欧州、ウクライナ安保部隊巡り国防相会合 詳細なお不

ワールド

フィリピン、トランプ関税でF16戦闘機購入に支障も

ビジネス

アップル、iPhone空輸作戦 トランプ関税対応で

ワールド

米とイラン、12日に核開発巡る直接会談=米国務長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 3
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が見せた「全力のよろこび」に反響
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 9
    【クイズ】ペットとして、日本で1番人気の「犬種」は…
  • 10
    右にも左にもロシア機...米ステルス戦闘機コックピッ…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中