なぜ議論を「グラフィック化」すると、ヒラメキ溢れる会議になるのか?
「なぜかあの人が苦手」から自分の多様性に気づく
── グラフィックファシリテーターの「あり方」が場に影響を与えるというのが印象的でした。「あり方」が影響するのはなぜなのでしょうか。
抽象的に聞こえるかもしれませんが、「社会」で起きていることは、「私」の中で起きていることだからです。たとえば、ファシリテーションの最中に、参加者が自分たちの発言の評価を気にしているように感じたとしましょう。それはファシリテーター自身の中にも「評価を気にしている自分」がいるから。相手は自分を映し出す鏡のようだといってもいいでしょう。
ファシリテーターに必要なのは、自分の中の多様性を認め、受け入れることです。周囲の人に「なんだか苦手だな」と感じたとします。それは自分自身の中にその苦手な特性があるのに、否定したり隠したりしようとしているから、気になってしまう。このとき、「そんな私もいるよね」と、あまり好きではない自分の居場所をつくってあげる。そうすると周囲の人に対しても許容できる度合いが大きくなって、対応できる人の種類が増えるんです。継続するにつれ、ファシリテーターの「あり方」が磨かれていきます。
── 最後に、山田さんが「あり方」を磨くうえで役立った本や影響を受けた本があれば教えてください。
最近だと、構造力学を研究してきたロバート・フリッツ氏の著書『自意識を創り出す思考』です。フリッツ氏は作曲家、映画製作者の顔をもち、『学習する組織』の著者ピーター・センゲ氏の師匠の一人でもあります。クリエイティビティを発揮したいのなら、自分が創り出したい成果、そして成果に対する今の現実にフォーカスすべきだと説いています。自身の「あり方」とクリエイティビティの発揮をリンクさせていくためのヒントを得たいという方にぜひ読んでいただきたいですね。
自意識(アイデンティティ)と創り出す思考
著者:ロバート・フリッツ ウェイン・S・アンダーセン 田村洋一(監訳) 武富敏章(訳)
出版社:Evolving
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山田夏子(やまだ なつこ)
一般社団法人グラフィックファシリテーション協会 代表理事、株式会社しごと総合研究所代表取締役社長、システムコーチ/クリエイティブファシリテーター。武蔵野美術大学造形学部卒業。大学卒業後、クリエイターの養成学校を運営する株式会社バンタンにて、スクールディレクター、各校館長を歴任。その後、人事部教育責任者として社員・講師教育・人事制度改革に携わる。同社にて人材ビジネス部門の立ち上げ、キャリアカウンセラー、スキルUPトレーナーとして社内外での活動を行う。教育現場での経験から、人と人との関係性が個人の能力発揮に大きな影響を与えていることを実感し、その後独立。
2008年に株式会社しごと総合研究所を設立し、グラフィックファシリテーションとシステム・コーチング®を使って、組織開発やビジョン策定、リーダーシップ事業を展開する。小さな組織から大企業までのチームビルディング、教育や地域コミュニティなど様々な現場で活躍、これまでに携わった組織は950社以上。また、グラフィックファシリテーター養成講座も開催し2000人以上が受講。愛あふれるファシリテーションに参加者が涙することも多い。
2017年から2018年3月までの約1年間NHK総合『週刊ニュース深読み』にグラフィックファシリテーターとしてレギュラー出演。また、2021年5月にはNHK総合『考えると世界が変わる「みんなパスカる!」』でも、グラフィックファシリテーターとして参加し話題を呼ぶ。
監訳書に『場から未来を描き出す―対話を育む「スクライビング」5つの実践』ケルビー・バード著(英治出版)がある。
flier編集部
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