最新記事

企業統治

フォルクスワーゲン前CEOが築いた「畏怖と尊敬」の独裁ビジネス

2015年10月14日(水)11時44分

 VWのデザイン責任者であるクラウス・ビショフ氏も、ウィンターコルン氏が不正を知っていた、もしくは容認していたと考えるのは想像しがたいとし、「彼は車の物理に精通した筋金入りのエンジニアで、ソフトウエアに関しては縁遠い」と指摘した。

 ウィンターコルン氏は、第2次世界大戦後にハンガリーからドイツに逃れてきたドイツ系移民の子として1947年に誕生。冶金学を学んだ後、独自動車部品大手ボッシュで出世街道を歩み、その後VWへ。2007年にCEOに就任してまもなく、同氏はVWを世界最大の自動車メーカーにするとの決意を抱く。それは当時、世界最大の自動車市場である米国でのシェア拡大を意味していた。同国での販売は何年も不振に陥っていた。

 その後、VWの年間世界販売台数は1000万台にまでほぼ倍増し、売上高も2000億ユーロ(約27兆2300億円)に上った。今年の上半期には販売台数で日本のトヨタ自動車<7203.T>をわずかに上回り、世界トップの座を獲得した。

 目標販売台数を達成しなければならないというプレッシャーはすさまじかったと、販売担当の元幹部は語る。「それが嫌なら、自分から辞めるか、成績不振で首になるかのどちらかだった」

 また、別の元幹部は独裁的な経営スタイルについて語り、どのように各ブランドのCEOが「かなり失礼に」扱われるか説明した。現在は別の世界的メーカーに勤務するというこの人物は、こうしたことは業界で当たり前のことではないと語った。

 犠牲者の1人は、2013年にVWを去ったジョナサン・ブラウニング前米国法人CEOだろう。当時、VWの関係筋はロイターに対し、ブラウニング氏は野心的な販売目標を達成できずに解雇されたと話した。

 ブラウニング氏の在任期間中、パサートモデルの改良失敗から、ペイントのようなささいに思われる事柄までさまざまな問題をめぐり、米国法人の経営についてウィンターコルン氏は非難していた。

 2013年7月に米国で行われた試験走行で、ウィンターコルン氏はビートルモデルの塗装面にわずかなへこみを見つけた。あるVW関係筋は匿名を条件に、塗装の厚みは社内基準から1ミリメートルも上回っていなかったが、それでも同氏はエンジニアたちにその無駄について説教していたという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏、TikTok米事業売却期限をさらに75

ビジネス

パウエルFRB議長、早期退任改めて否定 「任期全う

ワールド

グリーンランドはデンマーク領であること望まず=米国

ビジネス

中国が報復措置、全ての米国製品に34%の追加関税 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 2
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描かれていた?
  • 3
    「最後の1杯」は何時までならOKか?...コーヒーと睡眠の「正しい関係」【最新研究】
  • 4
    テスラが陥った深刻な販売不振...積極プロモも空振り…
  • 5
    大使館にも門前払いされ、一時は物乞いに...ロシア軍…
  • 6
    【クイズ】日本の輸出品で2番目に多いものは何?
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    地球の自転で発電する方法が実証される──「究極のク…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    アメリカから言論の自由が消える...トランプ「思想狩…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 10
    5万年以上も前の人類最古の「物語の絵」...何が描か…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 8
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中