フォルクスワーゲン前CEOが築いた「畏怖と尊敬」の独裁ビジネス
「フォルクスワーゲンの文化と組織的構造は特殊で、ダイムラーやBMWと比較できない。VWから聞こえてくるのは、同社には特別なプレッシャーがあるということだ」と、デュースブルク・エッセン大学自動車研究センターのフェルディナント・ドゥーデンヘッファー所長は指摘する。
辞任した際に不正を認識していなかったと語ったウィンターコルン氏の弁護団は、これについてコメントしなかった。
機能しなかった監査役会
すべてのドイツ企業には2つの役員会がある。1つはCEOが率い、日々の業務を運営する取締役会。もう1つはその上にあり、CEOが報告する監査役会だ。監査役会は取締役会メンバーを任命したり解任したりすることができ、主要な戦略的決断には監査役会の署名が必要となる。
ドゥーデンヘッファー氏によれば、このシステムはVWでうまく機能していなかったという。「ダイムラーやBMWの監査役会は、CEOをコントロールできているが、VWではそうはいかなかった」と同氏は指摘した。
VWの監査役会は20席あるが、法律的な要件を満たすため、労働者側と株主側にそれぞれ平等に9席ずつ割り当てられている。
だがVWは、他のドイツ自動車メーカーとある点で異なっている。つまり、同社が拠点とする独ニーダーザクセン州に監査役会の2席が与えられている。一方、メルセデス・ベンツを製造するダイムラーやBMWは、自社の監査役会に政治家は含まれていない。
ニーダーザクセン州と労働者側の代表者は目標を共有していると、業界に詳しい専門家たちは指摘する。その目標とは、同州最大の雇用主の1つであるVWの雇用を守ることだ。結果として、雇用さえ守られるのであれば、CEOには比較的自由な裁量が与えられる。
VWではコーポレートガバナンスが向上していなかったと、ドイツ銀行アセット・ウェルスマネジメント部門のヘニング・ゲブハルト氏は指摘する。
労働当局者とVW監査役会のニーダーザクセン州代表者は、この件についてコメントしなかった。
たたき上げ
一方、ウィンターコルン氏を支持する人もいる。VW米国法人のマーク・トラハン元上級副社長は、ウィンターコルン氏とエンジニア幹部の一部が不正を容認したとは考えられないとし、「個人的にウィンターコルン博士を知っている。エンジニアたちのことも知っている。米国の法律を犯していると知っていたなら、彼らが許すわけがない」と語った。