フォルクスワーゲン前CEOが築いた「畏怖と尊敬」の独裁ビジネス
常に最高の結果を従業員に求めた “独版ジョブズ ” ウィンターコルンの実像
10月10日、マネジャーに対する独VWの尋常でないプレッシャーが、今回の危機を引き起こした原因の1つだとする批判的な声もある。写真は引責辞任したウィンターコルン前CEO。独ハノーバーで4月撮影(2015年 ロイター/Wolfgang Rattay/Files)
排ガス不正問題で先月引責辞任した独フォルクスワーゲン(VW)のマルティン・ウィンターコルン前最高経営責任者(CEO)は、他の多くのCEO同様、失敗を好まない厳しいリーダーだった。
だが、マネジャーに対する同社の尋常でないプレッシャーが、今回の危機を引き起こした原因の1つだとする批判的な声もある。
不正を認めてから約3週間が経過したが、欧州最大の自動車メーカーである同社は、その責任者を特定するよう圧力にさらされている。
不正の要因となったのは、同社の企業文化なのか、それともウィンターコルン氏の経営スタイルなのかについて、VWはコメントを控えている。同氏の弁護団もコメントを差し控えた。
だがVWの問題が露呈し、ウィンターコルン氏が辞任した現在、一部の同社幹部は経営手法を変える必要があると明言している。
マイケル・ホーンVW米国法人社長兼CEOは米下院公聴会で、不正がVWの健全さについて何を物語っているかについて聞かれると、「われわれはプロセスを合理化しなくてはならない」と回答。
「VWは一貫性を保つためにこの機会を利用し、よく学ばなければならない。全世界の従業員60万人はこれまでとは異なる方法で管理される必要がある。これは非常に明白だ」と語った。
VW監査役会メンバーで、労働者組織の代表を務めるベルント・オスターロー氏はさらに明快に述べている。不正発覚から約1週間後の9月24日、同氏は従業員宛ての書簡で以下のように語っている。
「われわれは将来、問題が隠ぺいされることなく、上層部と率直に話し合いのできる企業風土が必要だ」
ロイターが取材した5人の元VW幹部と業界に詳しい専門家らは、ウィンターコルン氏の経営スタイルが、恐怖に支配された環境、そしてドイツ自動車業界に特有な企業構造もあいまって野放し状態の独裁体制をつくり上げたと口をそろえる。