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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
トランプ政権内の抵抗勢力は悪か、ヒーローか(パックン)
(c) 2018 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<NYT紙に寄稿した政権内の抵抗勢力(レジスタンス)は、一部の政策を阻止しても悪の政権の一員としての罪は拭えない>
「私は、トランプ政権内のレジスタンスの一員だ」。ニューヨーク・タイムズ紙に載ったそんなタイトルの寄稿で、匿名のトランプ政権幹部が驚きの事実を明かした。大統領には道徳心がない。指導者としては衝動的で攻撃的、狭量で無力。彼の判断は中途半端、情報不足、無鉄砲などなど。まあ、これには驚かないけどね。
でも、「同じ意見の多くの高官と共に、大統領の政策の一部や悪い習癖を懸命に妨害しようとしている」という。トランプ大統領の周辺に反トランプ勢力がいるというのは初耳だ。
風刺画の吹き出しは、ジャーナリストのボブ・ウッドワードの新刊『恐怖の男 トランプ政権の真実』で記された逸話を指す。韓国との貿易協定からの離脱を命じる書類をトランプが署名する前に、当時の大統領補佐官ゲーリー・コーンが大統領の机から引き抜いたのだ。セーフ!......いや、本当はアウトだろう。
寄稿者は、危険が分からない幼稚な大統領を「大人が見張っているから」と国民に安心を呼び掛けた。でも風刺画の人物はナチスの制服を身にまとい、大統領ではなく「Führer(総統)」の言葉を使っている。「ヒトラーは悪い癖はあるけど、僕らが付いているから大丈夫」と言っているようなものだ。
トランプ政権下では、メキシコ国境で4000人近くの不法移民の子供が親から引き離されている。ハリケーン被災地のプエルトリコで3000人近くが死亡している。火力発電所の規制緩和による大気汚染で、全米で最大1400人が毎年死亡すると推測されている。貿易戦争を始める。富裕層優遇税制で貧困層を苦しめる。同盟国と敵対し独裁者を擁護する。「大人たち」はトランプ坊やを随分遊ばせているようだ。「レジスタンス」は一部の政策を阻止しても、悪の政権の一員としての罪は拭えない。
寄稿者はヒーローを自称するが、反逆者だと言う人もいる。勝手に妨害することは、大統領の権限を奪うことになるからだ。ウッドワードはこの行為を「行政的なクーデター」と呼んでいる。国民に選ばれたのは政府の職員じゃない。彼らが大統領の命令に従わないと民主主義が成り立たない。不本意なのは分かるが、しょうがない。実際に大統領選で一番票を取ったことは間違いない、ヒラリー・クリントンが。......あら?
【ポイント】
I SECRETLY PLUCKED PAPERS OFF THE FÜHRER'S DESK SO HE COULDN'T SIGN THEM!
総統の机から書類をこっそり抜き取っておいた。彼が署名できないように!
REST ASSURED... THERE ARE ADULTS IN THE ROOM!
安心しなさい。大人が見張っているから!
<本誌2018年10月02日号掲載>
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