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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
トランプとは対照的だった英雄マケイン(パックン)
(c) 2018 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<マケインは2018年大統領選で戦った政敵オバマの「陰謀論」を否定して擁護し、トランプが推進したオバマケア撤廃法案に否決の1票を投じて抵抗した>
ベトナム戦争中の1967年10月。ハノイの上空で米海軍の戦闘機が北ベトナム軍に撃墜された。パイロットは脱出で両腕と右足を折った後、地元の人に銃剣で刺され、肩を砕かれた。そして捕虜収容所で尋問と拷問を受け、栄養不足で体重は50キロを切った。
しかし、彼はただのパイロットじゃない。父も祖父も海軍大将のサラブレッド、ジョン・シドニー・マケイン3世だった! おかげで収容所からの早期解放が許された。でも彼は特別待遇を断り、結局5年半も収容所に残ることになった。
その時期、ドナルド・トランプは大学に行き、学業や健康上の理由で徴兵を免れ、パパの不動産会社でアルバイトしていた。
73 年にマケインは解放されて帰国した。その後は海軍の指揮官、共和党の連邦下院議員、上院議員になる。上院議員として5回再選し、2回大統領候補となった。
その時期、トランプは3回結婚し、6回会社を破産させた。
マケインは政党政治より道徳と責任にこだわる、一匹オオカミ政治家と評価された。民主党のバラク・オバマ前大統領と戦った2008年の大統領選中に支持者が「オバマは信用できない......彼はアラブ人だ」と当時はやっていた陰謀説を口にすると、マケインは「違います。彼は家庭を大事にするいい人。私とは意見が違うけれども米国民だ」と潔く政敵を守った。
その後、トランプは「オバマには出生届がない。あってもイスラム教徒と書いてあるかも」などと言い、陰謀説に加担した。
2016年の大統領選では共和党にトランプの波が押し寄せたが、マケインは乗らなかった。トランプもマケインを「戦争の英雄じゃない。捕まったから英雄視されただけ。私は捕まらなかった人が好き」と蔑視した。選挙後も対立は深まる一方で、トランプが激押ししたオバマケア(医療保険制度改革)撤廃法案をマケインが重い一票で否決。大統領の暴走へのブレーキ役を務めた。
そんなマケインが8月25日に亡くなった。お葬式には共和・民主両党から元大統領のクリントン、ブッシュ、オバマと副大統領3人、両院幹部も駆け付け、人生を国にささげたヒーローに最後のお別れとお礼を告げた。
その時、トランプはゴルフに行っていた。まあ、故人の遺志でお呼びでなかったし。
【ポイント】
I LIKE PEOPLE WHO ARE JOHN McCAIN.
「私はジョン・マケインである人が好き」
MAVERICK HERO SERVED WITH HONOR AND GRACE
栄誉と品位を備えた一匹オオカミのヒーロー
<本誌2018年9月18日号掲載>
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