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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
中国の大学ではびこる密告制度
中国ではそのうち、小学生の間での密告が始まるかもしれない (c)2018 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<最近、大学教員が学生の密告で除名・処罰される事件が続き、キャンパス内での密告の流行をみんな怖がっている>
今年の夏休み期間中、「密告をしないことは守るべき人生の最低線だ」という文章が中国のSNS上で話題になった。名門・中国人民大学の呉暁求(ウー・シアオチウ)副学長が今年夏の卒業式で卒業生に語った言葉で、多くの人々の共感を得て大量にシェアされている。近頃、大学教員が学生の密告で大学側から除名・処罰される事件が続き、キャンパス内での密告文化の流行をみんな怖がっているのだ。
北京建築大学の教員は、授業中ずっと携帯をいじっている学生たちの態度に怒り、日本人学生の勤勉さを例に挙げて、「あなたたちも頑張らないと日本に負けて劣等民族になるよ!」と叱ったのが「人種差別」「日本にこびを売る売国言論」として学生に匿名告発され、処罰された。また湖北省にある中南財経政法大学の准教授は授業中、中国政府の憲法改正を批判したところ、学生の密告で停職処分になり党からも追放された。
現在東京に滞在中の北京師範大学の元准教授である史傑鵬(シー・チエポン)も、愛国教育を批判したネット発言が「政治規律に違反した」と密告され大学から解任された。
大学での監視は今に始まったことではない。08年、湖北大学のあるクラスでは学生たちが毎月くじ引きによってそれぞれ自分を監視する「天使」役を決め、行動内容を報告し合っていた。担任はこのやり方で効果的にクラスの規律を強化しようと考えたが、ナチスドイツの秘密警察ゲシュタポのようなやり方が社会の批判を浴びた。
そもそもこれはナチスの専売特許でもない。文化大革命の時期、中国では友達同士や同僚の間、そして家族同士に至るまで互いの監視と密告がかなり盛んだった。文革の失敗を反省した80 年代には一時的に停止したが、89 年の天安門事件以降、大学では「学生情報員制度」という名で密告制度が再開され、ネット世論が盛んになった近年、ますます強化されている。
密告制度は中国の有識者から反発を買っている。有名な経済学者でもある呉副学長が危険を承知の上、卒業式という公的な場所で学生たちに呼び掛けたのは、文革で学問の道を諦めかけた彼自身の体験と無縁ではないだろう。中国ではそのうち、小学生の間でも密告が始まるかもしれない。
【ポイント】
举报坏事、揭发坏人、学雷锋、见义勇为
それぞれ「悪事を通報せよ」「悪人を暴露せよ」「雷鋒(文化大革命でたたえられた模範)に学べ」「正義のため勇敢に行動せよ」
赤いネッカチーフと腕章
少年の赤いネッカチーフと腕章は将来の共産党員予備軍である中国少年先鋒隊のシンボル。腕章の2本線は中隊長の意味
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