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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
大統領が移民の国の歴史を知らないの?(パックン)
(C) 2018 ROGERS─PITTSBURGH POST─GAZETTE
<自由の女神が見守るニューヨーク湾のエリス島からは1200万人、現在のアメリカ人の4割の祖先が移民として入国してきた......そしてあの大統領のおじいさんも>
ニューヨーク湾にそびえ立つ自由の女神。マンハッタン島の最南端から、ちょっと遠くて意外と小さいけどきれいに見える。ただ不思議に思えるのは、なぜか顔はブルックリンのほうに向いているということ。
その理由は、女神の台座に刻まれた女流詩人エマ・ラザラスの詩を見れば分かる。それは、Give me your tired, your poor, your huddled masses(疲れ果て、貧しく、身を寄せ合う群衆を私に送りたまえ)と、世界からの移民を招き入れる内容。悲惨な状態で自由を求めてアメリカにやって来る人のために、女神が玄関口を照らしているという。
だから、彼女の顔はマンハッタンにも、アメリカ本土にも向いていない。正確に言うとブルックリンにも向いていない。太平洋、そして全世界の哀れな人々に目をやっている。まあ、ブルックリンにもそんな人々はいっぱいいるけど。
移民を歓迎するこの文言は理想で終わらずに、実質を伴うものだった。同じニューヨーク湾に浮かぶエリス島にはかつて移民局があった。19世紀末から60年以上の間、1200万人以上の移民がそこから入国し、彼らの子孫は今のアメリカ人のおよそ4割に上るという。アメリカは自由の国であって、移民の国でもある。女神は両方のシンボルなのだ。
この詩と歴史を知らないアメリカ人はいない。あっ......1人いたようだ。
ドナルド・トランプ大統領は、ラザラスが詩の中で哀れな移民を言い表した wretched refuse を、shithole countries(くその穴の国々)という下品極まりない表現で片付けている。彼は先日、移民に関する会議中にハイチやアフリカ諸国をこう呼び、一方でノルウェー人(Norwegian)のような移民をもっと受け入れてはどうかと勧めたらしい。
国内外で批判されたが、「国に貢献できる人材を優先し、英語もしゃべれずスキルもない移民を断る合理的な政策だ」と支持者は弁解した。
僕はそんな政策には反対。でも1885年にエリス島から入国し、英語がしゃべれず職業もなかったドイツ系移民の少年がアメリカに悪影響を与えている可能性は認める。それはフリードリヒ・トランプフ。トランプのおじいさんだ。
【ポイント】
SORRY... "WRETCHED REFUSE" SOUNDS LIKE S***HOLE COUNTRIES TO ME!
残念だが......「哀れな人々」はくその穴の国々と、私には聞こえるんだ!
<本誌2018年2月6日号[最新号]掲載>
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