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コラム
風刺画で読み解く「超大国」の現実 Superpower Satire
中国人の命は空気よりも軽い
©2017 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN
<「命は時に鴻毛(こうもう)より軽い」と言われるが、中国人の命は鳥の羽どころか空気より軽い>
最近、日本のあるニュースが中国をにぎわしている。領土問題? 歴史問題? そうではない。
話題をさらっているのは、中国人女子留学生が東京都内で中国人の男に刺殺された事件だ。このコラムでも1年前に紹介したが、殺されたのは都内の大学に通っていた江歌(チアン・コー)という24歳の女性。元カレから追い回されていた友人の「身代わり」になって被害に遭った。
江歌は小さい頃に父親を亡くし、母親が女手一つで育て上げた一人っ子だった。どの一人っ子の親も自分の子供が突然いなくなったら、という不安を抱えている。中国人がこのネタにヒートアップするのは、元・中国人の私にはよく分かる。
さらにこの問題を中国で炎上させているのが、江歌の母親が犯人に死刑を求め、日本で署名運動まで始めていること。日本の司法では初犯で1人を殺しても死刑になるのは極めてまれだが、社会感情や政治状況次第で判決基準が変わるのが当たり前の中国人にそのことは納得し難い。
中国は世界で一番死刑執行の数が多い国だ。人口が多いから当然だと思うかもしれないが、人口が中国の4分の1のアメリカは年間20人。中国は死刑執行数を公開していないが、国際人権団体によれば年間1000人を超すと考えられている。
死刑があっという間に行われるのも特徴だ。冤罪のあまりの多さと国際社会からの情報公開の圧力で、中国政府はしばらく前に「少殺慎殺(死刑執行は少数に、執行も慎重に)」というスローガンを打ち出した。それでも執行数は桁違い。もはや何かが狂っているとしか思えない。
「命は時に鴻毛(こうもう)より軽い」と言われるが、中国人の命は鳥の羽どころか空気より軽い。最近、北京郊外で火事をきっかけに当局が出稼ぎ農民を一斉に強制退去させる事件が起きた。国民の命と人権を軽視する心理は指導者に染み付いている。
不条理に対する江歌の母親の怒りを私は理解する。しかし、世情に流されず、慎重過ぎるほど慎重な日本の司法も支持する。恐ろしいことに中国最高検の機関紙、検察日報は「犯人が中国に帰ったら中国の法律で処罰できる!」と読者をあおっている。犯人は出所後、日本に亡命するかもしれない。
【ポイント】
快点动手吧!
早くやれよ!
「命は時に鴻毛より軽い」
歴史家・司馬遷の言葉。「命は鴻毛より軽い」とよく引用されるが、正確には「命は時に山より重く、時に鴻毛より軽い」
[本誌2017年12月12日号掲載]
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