コラム

訪日外国人4000万人へのハードルとは

2018年02月08日(木)17時00分

最も不満の声を聞くのが料金体系です。いくら円安だからといって、電車で移動するような人は、コスト感覚に厳しい人が多いわけです。ですから、他社線に乗り換えるたびにドンドン運賃が跳ね上がるシステムには、不快感があります。だからと言って、メトロと都営、私鉄とJRが錯綜するネットワークの中で「どの経路がお得か?」を理解するのはニッポン初心者には至難の技です。

例えば「東京フリーきっぷ」というものがありますが、自由乗降区間は「東京23区内のJR・都営・メトロ」の3社だけですから、そもそも成田空港どころか羽田空港もエリアに入っていません。しかも、大人1枚1590円と高額ですし、紙の切符ですから非接触式の自動改札は通れません。

東京五輪までには、このフリー切符を「JR・都営・メトロ・民鉄・バスの全線対応」「成田、羽田両空港を含む」「できれば千葉、埼玉、神奈川の主要都市から東京寄りの全域も含む」「非接触の電子式」「1日券が1200円、5日券が3800円、7日券が5000円ぐらいに設定」して、空港で大々的に販売したら良いと思います。

いずれにしても、4000万人というのは大変な数字です。これを達成するには、「全く日本と縁のない、従って知識も少ない初心者」をさらに呼び込むと同時に、「リピーター」に何度も来てもらう必要があります。そのためには、「日本ブーム」に安住することなく、こうした問題について都市圏ごとに知恵を絞って改善していくことが必要ではないかと思うのです。

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プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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