コラム

「トランプ旋風」にダマされるな!

2015年08月11日(火)11時40分

 では、そんなトランプ氏が世論調査でダントツの首位ということは、アメリカの民主主義は「劣化」しているのでしょうか?

 そうではないのです。この支持率24.3%とか、視聴数2400万というのは、「シリアスなものではない」のです。アメリカの有権者は、十分に健全であって、このドナルド・トランプという人を合衆国大統領にする気などまったくないと思います。

 では、この「現象」は何を意味するのでしょうか?

 簡単なことです。アメリカの有権者は、フロント・ランナーと言われるヒラリー・クリントンにも満足していないし、彼女に対抗している共和党の本命候補、例えばジェブ・ブッシュなどにも満足していないのです。彼らに奮起を促すために、またそのために予備選を盛り上げて行くために、まったく仮の動きとして「トランプ旋風」を煽って、楽しんでいるだけなのです。

 やがて、トランプ氏の勢いは止まるでしょう。その時には、ヒラリーとジェブという本命中の本命が一騎打ちを始めるでしょう。ただしトランプ旋風が長引く、つまりヒラリーやジェブへの不満感が深刻なものとなった場合には、例えばルビオとかクルーズといった共和党の若い世代の思いがけない躍進ということがあるかもしれません。いずれにしても、「トランプ旋風」にダマされてはいけません。

<文頭写真:テレビ討論会でも暴言を吐きまくったトランプ Brian Snyder-REUTERS>
プロフィール

冷泉彰彦

(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修士(日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。

最新刊『自動運転「戦場」ルポ ウーバー、グーグル、日本勢――クルマの近未来』(朝日新書)が7月13日に発売。近著に『アイビーリーグの入り方 アメリカ大学入試の知られざる実態と名門大学の合格基準』(CCCメディアハウス)など。メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」(www.jmm.co.jp/)を連載中。週刊メルマガ(有料)「冷泉彰彦のプリンストン通信」配信中。

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