上空で転倒して骨折のCA、客室乗務員が「若い女性」である必要はあるのか?

客室乗務員が「美女」である必要はもはやないはず Kate Munsch--REUTERS
<3月末、羽田発大分行きの日本航空機が飛行中に突然揺れて客室乗務員の女性の体が宙に浮き、落下して腰の骨を折る、という事故が起きた。気の毒な限りだが、そもそもCAの採用基準は間違っていないか>
洪水のように日々流れてくるウクライナ情勢のニュースに些か食傷気味になっていたところ、「JAL機大きく揺れ客室乗務員が腰を骨折」とのニュースを見た。3月26日羽田発大分行きの機内で、27歳の客室乗務員の女性がギャレーと呼ばれる作業スペースで転倒し、大けがを負ったのだという。機体が大きく揺れ体が宙に浮き、落ちて腰の骨を折ったらしい。気の毒な限りだが、やっぱり客室乗務員(CA)の採用基準は根本的におかしいというのが、私の率直な感想だ。
コロナが始まってからはめっきり減ったが、コロナ前は、私も仕事で国内外に飛行機で移動することがしばしばあった。機内に入り、若い女性の客室乗務員から「接遇」(航空業界では接客ではなく接遇という言葉を好む。単なる接客以上の格別な配慮と丁寧さ、ホスピタリティーを強調したいらしい)を受けると、私は何とも不可解な気持ちになったものだ。
なぜ、美女を配置する必要があるのだ? と。
厳しい接遇トレーニングを経て獲得された、いやに柔和な笑みを明らかに「顔採用」で選ばれた容貌の面々から向けられると、私は日本社会に絶望する。
アナウンサーで「顔採用」が行われるのは、一応分かる。全国民に向かってニュース原稿を読み上げる仕事は紛れもなく「他人から見られる仕事」である。時にはタレント的な振る舞いをも求められるアナウンサーには、外見的な華やかさがあるに越したことはない(今後はこうした価値観も変わっていくのかもしれないが)。
だが、客室乗務員が若く美しい女性である必要は、いったいどこにあるのか。私はガールズバーに遊び来たわけでもなければ、「パパ活」をしに来たわけでもない。安全かつソコソコ快適に、上海なり福岡なりの目的地まで運んでくれれば、それでOKだ。
歴史的経緯があるのは分かる。「夢のハワイ旅行」と言われた1960年代があり、その後の高度成長とバブル景気の90年代初頭まで、航空機は一貫して非日常の特別な乗り物であった。狭苦しいシートに身を縮めて気圧差で耳がキンと痛んだり、小学校の給食のような味付けの機内食に少々首を傾げたとしても、「空の旅」は庶民にとって絶対的な憧れの対象であり続けた。チケット代も、今とは比べ物にならないぐらい高額だった。
そんな一念発起の非日常の記念すべき乗り物で受ける機上のサービスは、最上級のものである必要があった。だからこそ、エアガールやスチュワーデスと呼ばれた時代の彼女たちは、人並み以上の知性と徳性、そして美貌をも兼ね備えた最上級に優秀な人材である必要があったのだろう。
昭和の時代、ビジネス客の大多数は男性であり、その男性たちに少しでも満足して頂くサービスをと考えた理路が、才色兼備の若い女性による行き届いた接客ということになったのだ――。
何もかも時代遅れである。
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