コラム

中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法

2025年01月28日(火)20時35分
フジテレビ

やり直し会見に臨むフジテレビの港浩一社長(中央)ら(1月27日) Issei Kato-REUTERS

<長時間に及んだフジテレビの記者会見で、幹部たちは「中居正広は何をしたのか」という核心部分への明言を意図的に避けた。それは結果的に真相を覆い隠し、加害者を利することになっている。だが、被害者を守りながら真実にたどつく方法はあるはずだ>

タレントの中居正広と女性をめぐる性的トラブルで、フジテレビの嘉納修治会長と港浩一社長が27日に対応のまずさの責任を取って辞任。臨時取締役会後の「やり直し会見」には437人の記者が参加し、その長さは異例の10時間23分に及んだ。

女性の保護、被害者のプライバシー、刺激しない、守秘義務......。フジテレビの会見を見て分かったことは、「加害者は被害者を利用する」ということだ。「プライバシーを悪用する」と言ってもいい。被害者のプライバシーを盾として使い、自己保身に走る。中居正広もフジテレビ幹部も、その点は完全に同じだった。

中居正広は被害者に対して、何をしたのか。幹部たちは最後まで明言を避けたが、全体的な文脈から考えて、被害者視点では性加害があったと考えるよりほかない。ただ、自分たちがそう明言して良いかどうか、幹部たちはひどく迷っているようだった。

もちろん、性加害があったかどうかは現時点では断定できず、疑惑の段階だ。加害者という表現も被害女性に寄り添った言い方であり、刑事的な意味まではない。だが、疑惑であることすら明言を避ければ、結局は中居正広の「罪」を覆い隠し、利することになってしまう。

では、どうしたら良いのか。

今、私たちがすべきことは、もし本人が話したいなら、被害者に声を取り戻させることである。言い換えれば、自由に発言できる状態にさせるということだ。

被害女性はこれまでも週刊誌の取材に応じているが、中居正広が何をしたかという核心部分には一切触れていない。双方の交わした示談書のなかに守秘義務、すなわち口外禁止条項が盛り込まれているからだろう。中居正広もまた、守秘義務を盾に一切の説明責任を放棄し、私たちの前から逃げてしまった。

中居正広が具体的に何をしたかについて被害女性が声を上げれば、示談書の口外禁止条項に違反するだろう。そうなれば、中居正広は被害女性に対し損害賠償を求めるかもしれない。訴訟になれば、裁判所も一定金額の損害賠償を認めざるを得ないだろう。だが、それが何だというのだ。

もし女性に損害賠償請求がされるなら、このコラムを書いたライターとして、あるいは中居正広を持ち上げ巨万の富をもたらしてしまった元ファン(カラオケでSMAPの曲を歌うだけの薄いファンではあったが)の1人として、私は金銭的な協力をしたい。

そして、私と同じように被害女性に課せられた賠償金を「少しぐらいなら払ってもいい」と思える人が10人、20人、あるいは100人、200人と集まれば、口外禁止条項など怖くないはずだ。中居正広が被害女性に賠償金を要求するのであれば、それは私たちが弁護士費用も含めて全額肩代わりすれば良い。いや、肩代わりする義務がある。法的な義務はないが、道義的な義務がある(あるいは、フジテレビこそ肩代わりすべきかもしれないが)。

現実的には、中居正広が損害賠償まで請求するとは考えにくいが、「身銭を切ってでもあなたを守る」という世論が背景にあるだけで、彼女の精神的負担はかなり軽くなる。そもそも、「トラブル」の存在が明らかとなった今となっては、口外禁止条項の不履行によって生じる賠償金は、それほど大きくならないのではないか。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHP新書)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

フィリピンGDP、第4四半期は前年比+5.2%で横

ビジネス

トヨタの24年世界販売3.7%減、過去最高の海外寄

ビジネス

JPX、山道CEOらの報酬減額 東証元社員のインサ

ワールド

米環境保護局長官にゼルディン氏、上院が承認
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 3
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? 専門家たちの見解
  • 4
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 7
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 8
    女性が愛おしげになでていたのは「白い犬」ではなく.…
  • 9
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    日鉄「逆転勝利」のチャンスはここにあり――アメリカ…
  • 5
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
  • 6
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 9
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 7
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 8
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    戦場に「杖をつく兵士」を送り込むロシア軍...負傷兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story