コラム

上空で転倒して骨折のCA、客室乗務員が「若い女性」である必要はあるのか?

2022年04月05日(火)06時30分

なぜCAの半数がイケメン男性でない?

百歩譲って、「容貌の優れた者によるサービスで客を喜ばせる」というコンセプトがあるのであれば、現代社会において、客室乗務員の半数はイケメン男性でなくてはならないはずだ。令和時代の機内の客席を見渡すと、男女比は概ね半々。現行の客室乗務員の採用基準では、女性客を完全に無視していることになる。

そもそもの話、客室乗務員の仕事はどう考えても男性のほうが向いている。小柄な女性スタッフが重たいスーツケースを頭上の棚入れに持ち上げようと苦心している時など、「手伝いましょうか?」と客のこちらが手助けしそうになる(「接遇」を叩き込まれている彼女たちは、そんな申し出はかたくなに拒否するのだが)。

乱気流で揺れる機内でバランスを保ちながらカートを運ぶのも、体幹のしっかりした男性のほうが向いているだろう。何より、ハイジャックなどの不測の事態や、そこまで凶悪でなくとも、面倒なクレーマーや悪質な客と対峙する際には、屈強な男性のほうが適している。警備員や警察官は男性が適している場面が多いと言えるが、それと同じ理屈だ。

ついでに言わせてもらうと、機内食も積極的に減らしていって欲しい。あるいは、おにぎりや菓子パンを配る程度で十分だ。あの狭い機内でカートを運んでガチャガチャとトレーを出したりしまったりするのは、手間がかかって不経済である。

ドリンクサービスも合理的ではない。エコノミークラス症候群の防止のため水分補給は必要だが、ペットボトルの水でも配っておけば良かろう。かつて、JALの機内で「ジントニックください」と注文している客がいて、客室乗務員がその場で器用に作り始めたのを見て驚いたことがある。なぜ、カクテルの作り方まで習得する必要があるのか。そもそも、「無料」のアルコールサービスまで用意する必要がどこにあるのか。

サービスが良いに越したことはないし、どうせなら美女の方が良いなあと、そう思う人もいるかもしれない。だが、考えてみれば、それらの付加価値はすべて勘定に含まれているのだ。我々が支払う航空運賃のなかには「美女鑑賞料」、「ジントニック準備代金」、「機内食ランチ料金」といったものが、すべてコミコミになっている。「若い美人の女性」という無意味なフィルターを外せば、もっと優秀な人材を採用できるかもしれないし、採用コストも下がる。航空運賃も下がるだろう。

別にジェンダー平等やダイバーシティを殊更に訴えたいわけではなく、単純な合理性から考えて、今のやり方は不合理極まりないのだ。ジェンダー平等やルッキズムに厳しそうな欧米社会では、このあたりどうなっているのだろう。

40歳男性の私ですら奇異に感じているだから、20〜30代の女性の多くはもっと違和感を感じているのではなかろうか。転倒事故は不幸なことだったが、転んでもタダでは起きないという格言もある。その言葉の通りになることを、願っている。

プロフィール

西谷 格

(にしたに・ただす)
ライター。1981年、神奈川県生まれ。早稲田大学社会科学部卒。地方紙「新潟日報」記者を経てフリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。現在は大分県別府市在住。主な著書に『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『ルポ デジタルチャイナ体験記』(PHPビジネス新書)、『香港少年燃ゆ』(小学館)、『一九八四+四〇 ウイグル潜行』(小学館)など。

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