英国の経済失政で株式市場は混乱、リーマンショックの前兆なのか?
英国のトラス新政権の経済失政が株式市場に影響を及ぼしている...... REUTERS/Toby Melville/Pool
<英国のトラス新政権の経済失政をきっかけとして、2008年のリーマンショックのような金融市場での危機が併発する可能性はあるのだろうか?>
米国の株式市場では9月後半にかけてダウ平均株価が3万円台の大台を割り込むなど、主要な3指数は6月の年初来安値を下回るまで下落、S&P500株価指数は9月末に年初の最高値から一時約-25%まで下落した。
9月23日に英国のトラス新政権が打ち出した財政政策が、同国のインフレを一段と高進させ、経済情勢を混乱させるとの懸念が高まった。英国を中心に長期金利が急騰して、通貨ボンドも急落。FRBの利上げへの警戒感が強まる中で、英国の金利急騰が加わったことで、市場心理は極度に悪化して株価などリスク資産の大幅な下落をもたらした。
本来、減税を含めた財政政策は、経済情勢に応じて実現するのがセオリーである。現在の英国のように、中央銀行がインフレ制御に取り組む一方で、政府が拡張的な財政政策を強めれば、経済情勢がより不安定化するのは自明である。協調されるべき金融財政政策において、トラス政権が真逆の対応を繰り出したことが今回の混乱の本質だろう。
また、英国における大幅な金利上昇は、年金ファンドがレバレッジをかけたポジションを構築していたので、債券価格目減りで証拠金が不足するに至り、自己実現的に債券売りが売りを呼び、金利上昇に拍車にかけたと報じられている。
この問題への対応で、年金資産維持と金融システムの秩序を保つために、英中銀が9月28日に超長期国債を制限を設けずに購入するとして、英債券やポンド売りが止まった。更に緊急措置が発動されているこの期間に、トラス政権は10月3日に高所得者に対する減税政策の修正に動いた。この政策修正をうけて、英国のパニック的な金利上昇局面は一旦収まったとみられる。
米欧株市場が急反発しているが......
このため、10月に入り、9月末まで下落していた米欧株市場が急反発している。ただ英国の減税政策の修正は、トラス政権が掲げる拡張的な財政政策のごく一部である。減税幅の縮小や歳出抑制など更なる修正を行わなければ、9月20日以前の水準に英国の長期金利が低下する可能性は低いのではないか。
また、英国政府が拡張財政施策で景気押し上げを目指しても、その分、高インフレを制御する中銀による利上げ幅が大きくなるので、その景気押し上げ効果がほとんど表れない。経済政策への不信感で、金融市場の動揺が長期化するなど、経済活動への下押しが強まりかねない。
結局、政治的な強い動機があっても、経済情勢に見合わない金融財政政策は、多くの場合混乱や経済停滞を招くという望ましくない事態を引き起こす。今後の政策対応次第ではあるが、このまま経済情勢に応じた適切な金融財政政策が実現しなければ、英国経済は低成長となり国民が大きなコストを払う、という教訓が繰り返されるリスクが高いのではないか。
英国の混乱の長期化は、世界の株式市場の趨勢に影響を及ぼすのか?
ところで、英国で危ぶまれている経済政策の失政をみて、筆者の頭に浮かんだのは、記憶に新しい日本の経済政策の失敗である。2008年のリーマン危機発生から2012年まで、日本では深刻なデフレと経済停滞下で、「不十分な金融緩和」と「増税政策」という緊縮的な経済政策が続いたのは失政だったと言えよう。現在の英国は方向は異なるが、このままでは同様に典型的な経済失政と評価されるリスクがある。先進国であっても、政治情勢次第で経済失政は起こり得るということである。
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