コラム

トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済の停滞は続く

2025年02月19日(水)19時49分
ドナルド・トランプ米大統領

トランプ政権の政策が欧州経済に意外な効果をもたらす? Kent Nishimura- REUTERS

<中国など新興国と異なり、トランプ「相互関税」が日本や欧州に及ぼす影響は限定的だ。金融市場は関税政策を好感し、米国株は一段高も期待できる。だが実は、それ以上に好調なのは、ドイツなど欧州株。予想外の成長シナリオが想定できる理由とは?>

1月20日にトランプ大統領が就任し、関税政策や外交政策が動きつつある。関税政策については、2月6日コラム「トランプ政権の関税引き上げが日本株の脅威になる理由(ただし、間接的に)」で説明したように、カナダ、メキシコへの関税賦課発動は土壇場で1カ月先送りされた。

これらの国に対しては、移民対策などへの圧力を高める手段として関税引き上げが使われている、と位置付けられる。

さらに2 月13 日には「相互貿易と関税」を実現するための大統領覚書(大統領令)が署名され、いわゆる相互関税の導入が明確になった。これは関税政策の強化だが、もともと高い輸入関税を課している新興国に対して、トランプ政権が関税引き上げを求めることを意味する。

標的である中国だけではなく、国内産業保護を続ける新興国であるインドやブラジルなどからの輸入品に対しても、政治ディールの材料として関税を賦課することをトランプ政権は目指すだろう。

一方で、もともと関税率が低い日本、欧州からの輸入品に対しては、相互関税が及ぼす影響は限定的である。

日本について関税賦課の対象になるのは、高い関税で保護されている食料品である。また、自動車については日本国内の税制などの制度が複雑であることや安全基準が高いことが非関税障壁と認定されており、トランプ政権による関税引き上げの対象になると筆者は予想している。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書が2025年1月9日発売。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦協議、進展なく終了 人質巡りハマスに柔軟性

ワールド

輸入医薬品に関税、「さほど遠くない」将来に トラン

ワールド

習主席がベトナム訪問、45件の協定に調印 供給網・

ビジネス

短期インフレ期待、23年10月以来の高水準に=NY
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトランプ関税ではなく、習近平の「失策」
  • 3
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができているのは「米国でなく中国」である理由
  • 4
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    シャーロット王女と「親友」の絶妙な距離感が話題に.…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 10
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 7
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 8
    「吐きそうになった...」高速列車で前席のカップルが…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story