コラム

トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済の停滞は続く

2025年02月19日(水)19時49分

貿易赤字を是正する目的に対しては実際のところ関税賦課の効果は限定的で、自由貿易を阻害する関税引き上げは、米国にとってもマイナスの影響が大きい。ただ、米国の輸入金額が大きいうえに、関税引き上げの悪影響とセットで減税政策を繰り出すという対応で、相対的に米国経済へのダメージは抑制される。

他国への理不尽な要求ではあるが、「米国第一」を掲げるトランプ政権は着々と政策を推進していると言える。

関税政策が、事前想定どおり過激ではなかったことを好感

最近の米国の経済指標は強弱入り混じっているが、総じて見れば、経済成長率、インフレ率ともに安定した動きが続いている。1月の消費者物価の上振れでインフレ懸念が一時高まったが、これは単月のノイズで上振れている側面も大きく、インフレの基調が変わっているわけではない。

今後トランプ政権が関税賦課を実現していくことが輸入価格上昇をもたらすが、それがインフレの再加速を招くほどのインパクトには至らない、と筆者は引き続き想定している。FRB(連邦制度準備理事会)は、3月会合で1月に続き政策金利を据え置く見通しだが、経済活動とインフレの落ち着きを見定めて、6月会合までには利下げを再開するだろう。

トランプ政権の関税政策が、事前想定どおり過激ではなかったことを金融市場が好感する中で、米国株(S&P500)はほぼ最高値圏で推移、年初まで上昇していた米国債10年金利は4.5%付近まで落ち着いている(2月14日時点)。

プロフィール

村上尚己

アセットマネジメントOne シニアエコノミスト。東京大学経済学部卒業。シンクタンク、証券会社、資産運用会社で国内外の経済・金融市場の分析に20年以上従事。2003年からゴールドマン・サックス証券でエコノミストとして日本経済の予測全般を担当、2008年マネックス証券 チーフエコノミスト、2014年アライアンスバーンスタン マーケットストラテジスト。2019年4月から現職。『日本の正しい未来――世界一豊かになる条件』講談社α新書、など著書多数。最新刊は『円安の何が悪いのか?』フォレスト新書。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=小反落、ダウ155ドル安 関税巡る不

ビジネス

ユナイテッド航空、第2四半期見通し予想下回る 景気

ワールド

米、メキシコ麻薬カルテルのリーダーに制裁 情報提供

ビジネス

NY外為市場=ドルが対ユーロ・円で上昇、関税巡り慎
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 3
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 7
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story