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カタルーニャ州首相の信任投票が延期された本当の理由
そんな中、独立宣言を朗読して拘束され、翌日に釈放された当時のカタルーニャ州議会議長は「自由に発言ができる人が議長になるべきだ」として、議長再任を拒否したことから、現議長トゥレンが選出された。出頭命令がなく、釈放中でもない彼は、「自由な発言ができる」からだ。
今回トゥレンは、「信任投票を延期するが、中止ではなく、プッチダモンが首相候補であることに違いはない」「カタルーニャの議会で選出された人がカタルーニャの首相になるのであって、600キロ離れた(マドリードの)法廷が決めるのではない」と38歳の若い議員らしい歯に衣着せぬ発言で、中央政府を果敢に牽制した。
「帰国ミッション」に失敗したのが理由?
とはいえ、多くのカタルーニャ議員が、スペイン政府の法的圧力に萎縮していることは間違いない。
トゥレンが所属するカタルーニャ共和主義左翼(ERC)の党首で、元カタルーニャ政府副首相ウリオル・ジュンケラスは、独立宣言以来投獄されたままだ。ERCのナンバー2で、2月19日に法廷への出頭を命じられているマルタ・ルビラは「州首相就任は、これ以上逮捕者が出ず、就任の有効性が保証される(10月の独立宣言のように即時取り消しにならない)という条件下で行われるべきだ」と、信任投票延期後にコメントしている。
しかし、トゥレンや議員らが逮捕を恐れたことだけが、延期の本当の理由だとは考えづらい。なぜなら、プッチダモンが首相候補である限り、スペイン中央政府が、ルビラの言う「保証」を与えるはずがないのは自明のことだからだ。延期決定を信任投票当日の朝まで待つ必要もなかった。
信任投票延期の本当の理由は、プッチダモンが「帰国ミッション」に失敗したからではないかと私は考えている。スペイン警察の目をかいくぐり、彼がカタルーニャに戻っていれば、おそらく就任投票は強行されていただろう。
プッチダモンは、国外のどこかで行く手を阻まれたのか、カタルーニャには入ったものの議事堂まで辿りつかなかったのか。それとも「亡命先」ブリュッセルに足止めされて全く動けなかったのか。それは計り知れない。
しかし、30日の朝までに議会への出席をトゥレンに確約できなければ、信任投票を延期するという密約が 2人の間で結ばれていたのではないかと、私は推測している。
独立派が肩を落としていたその夜、「事件」が起きた。
スペインの民放テレビが、「亡命中」の元閣僚アントニ・クミンにプッチダモンが送ったメッセージをスクープした。プッチダモンはその中で、信任投票の延期によって自分の首相就任が事実上なくなったと述べて、「モンクロア(スペイン首相官邸)の勝利」「カタルーニャ共和国の最後の日々」と綴っていた。
ベルギーのある会議に出ていたクミンが、プッチダモンからのメッセージが表示されているスマートフォンを、上向きにしたままテーブルの上に置きっぱなしにしていたところ、プッチダモンをこき下ろすことで知られるスペインの民放番組のカメラマンが、後ろの席に潜んでいて盗撮したものだという。
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