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就活ルールの議論では、企業も大学も学生のことを考えていない
例えば、レノボグループは2011年のNECのPC事業に続き、昨年には富士通のパソコン事業である富士通クライアントコンピューティングの51%の株主となり傘下に収めた。東芝の医療事業の中心であった東芝メディカルシステムズは、昨年キヤノングループ入りし、今年の1月には社名がキヤノンメディカルシステムズに変わった。
企業や事業が普通に売り買いされる時代には、ひとつの会社で一生勤め上げようと思っていても、それが許されない状況が突然訪れるのだ。自分の人生は自分のものであると自覚して、自らのキャリアを自ら切り開かなければならない時代なのだ。
新卒最低年俸720万。もちろん全員ではない
かつて新卒採用の初任給は、大卒、大学院卒などの学歴で一律というのが当たり前だった。しかし、例えばメルカリは、2月に新人事制度を導入した。「内定者に対し、個人のスキルやバリューに応じた適正なオファー(年収)を、学年不問・時期不問で提示」「インターンや大学での研究成果やイベント登壇といった学内外の活動を通して内定期間に有力なスキルや経験を身につければ、初任給として提示した報酬が上がる可能性がある」という。
サイバーエージェントも今年1月、エンジニアを対象に、これまで一律で定めていた初任給制度を撤廃し、個々人の能力別給与体系に変更した。さらに、高度な技術や実績、成果を持つ学生を対象に「エキスパート認定」制度を導入。認定されれば、最低年俸720万円~(60万円/月~)となると発表した。
また、グローバル化の影響も避けて通れない。昨年、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の初任給40万円という求人情報が話題になった。昨年11月15日の日経新聞の記事には、「欧米企業にやっと肩を並べたレベルで、珍しくはない。優秀な人を取るためのグローバルスタンダードです」(ファーウェイ・ジャパン広報)とのコメントが載っている。
エンジニアなど獲得競争の激しい職種から始まっているとはいえ、少しずつだが、新卒を一律に見る風潮はすでに崩れ始めている。
基礎教育が不要な、大手を辞めた2~3年目を狙う企業
一方、若手採用を見直した中小企業もある。企業名は出せないが、新卒採用を縮小して、大手に入社して2~3年で辞めた人を集中的に採用しようと考えているのだ。
理由は明確だ。中小だと新卒の育成に時間もお金も掛けられない。大手は充分な新人研修をして、きちんと育てており、中小よりレベルの高い教育が施されている。自分で育てるよりも、育ててもらった人を採用する方がてっとり早い。大企業の意思決定の速度や、役職階層の多さに嫌気がさして辞める人には、中小のベンチャー企業は魅力的に見えるので、そのターゲットを徹底的に狙うというのだ。
このような採用方法の良し悪しは置いておいて、入社式直後でも、合わないと思ったら平気で辞めていくことさえ当たり前になりつつある時代である。企業は今後も新卒を育成する費用と時間を負担し続けるだろうか。
2015年に入社した大卒新人が今年3月31日までに離職した「3年以内の離職率」は31.8%(厚生労働省調べ)。3人に1人はもう居ないのだ。教育投資をして、やっとこれからという時に辞めていく人が増えれば、教育の責任を企業が持ち続けるだろうか。新卒を一括で採用し、一律に教育して育てるというあり方を見直し始める企業も出てくるはずだ。
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