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就活ルールの議論では、企業も大学も学生のことを考えていない
キャリア発達の「探索」段階には、社会を知ることが重要
その体験をもっと早い段階にすれば、就職活動である企業との接触が楽しくなり、ワクワクする人が増える可能性がある。本来の就業体験であるインターンシップをもっともっと進めるべきだ。
1年生からインターンシップを経験できれば、いかに今のままの自分では通用しないかがわかるだろう。おのずと、勉強や訓練が必要なことを理解するだろう。大学も、学生に授業に出ることを強要するのではなく、学びが必要なこと、学びによって自分が成長できることに気づかせた方が、はるかに本気で勉強するのではないだろうか。
現行ルールの就活だと、短期間にまとめて説明会参加や先輩訪問をしなければならないので、大学に行く時間がなくなる。自分のキャリアを考える時間も、他の勉強と同じように計画的に1年生から組み立てれば、今以上にバランスの良い学生生活になるはずだ。
米国のキャリア研究者、ドナルド・E・スーパー(Donald E Super)は、キャリアの発達段階を5つのライフ・ステージに分けた。「成長」、「探索」、「確立」、「維持」、「解放」の5段階で構成される。その第2期である探索段階(15歳から24歳)を、世の中にはいろいろな分野の仕事があることや、そのための必要条件を知り、自己の興味関心などに合わせ、特定の仕事に絞りこんでいく段階であり、その仕事に必要な訓練を受け仕事につく段階とした。人生における探索段階の重要性を伝えている。
日本の大学でも、低学年からのキャリア教育が始まってはいるが、学内だけでなく、もっと企業や社会と一体となって、本当の探索活動をさせないといけない。これが不十分だと「確立」段階に移れず、就職しても青い鳥を探し続けて、不必要に転職を繰り返してしまう可能性があるのだ。
M&A、事業譲渡も当たり前の時代の就活ルールとは
では少し、就職協定に関するこの数か月の動きをまとめてみよう。その後に、なぜ新ルールを作る際に、発想を根本的に変えるべきかをお伝えしよう。
9月に経団連の中西会長が、「経団連が採用選考に関する指針を定め、日程の采配をすることに違和感を覚える」との発言をした。
経団連は10月9日の会長・副会長会議で、現在大学2年生である2021年春入社以降の新卒者を対象とする就職・採用活動のルールを策定しないことを正式に決めた。
それを受けて、政府は内閣官房、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の関係省庁で議論する連絡会議を開催。経団連と国・私立大で構成する就職問題懇談会(就問懇)も関係者として出席。10月29日に、混乱が生じるのを避けるためか、2021年春入社の「就活ルール」も、説明会3月、面接6月解禁という現状維持で決定した。
就職協定の議論の際には、中小企業は採用が困難になる、もしも長期化すれば内定者フォローが大変になるなど、企業側の視点が語られる。また、大学側は、学生の勉強する時間を確保するために活動開始を遅らせたいという。どちらの意図もわかるが、学生のためにどうあるべきかを、今こそ本質的に考えるべきではないだろうか。
就職協定を過去からの歴史的経緯で語りたがる人もいる。97年に活動ルールが廃止された時に混乱があったからだ。しかし、考えないといけないのは、当時とは取り巻く環境が大きく違うということだ。一括採用、年功序列、終身雇用などの日本的雇用の特徴といわれたものが、少しずつだが、大きく変わろうとしている。
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