コラム

57歳で雑誌のグラビア撮影(笑)をされながら考えたこと

2018年05月19日(土)16時30分

中国の成熟した消費者たちの目に映る日本

中国の経済、そして消費者たちは急激に進化しているわけだが、気になるのは、その彼らの目に日本がどう映っているのかということ。

ビル群、ショッピングモール、高級ブランドショップ......こうした物質的な繁栄では、中国は既に日本をはるかに上回っていると言える。成り金趣味的な視点から見れば、日本など取るに足らない国に見えるだろう。

だが成熟した消費者、成熟した中産層の目から見ると違う。日本の街や店は細部に至るまで人間のために考え抜かれた設計で、あらゆるところに気遣いが詰まっている。そう、「おもてなし」の心だ。

訪日外国人観光客は2017年、2869万人に達した。うち735万人が中国で、前年から15%増加。国別で1位となっている。堅調に増えているわけだが、その中心となっているのがリピーターの個人旅行客だ。以前ならばツアーで日本にやってきて、慌ただしく観光地を見て、買い物しておしまいという旅行がほとんどだったが、最近では日本の細やかな気遣いをじっくり体験したいというニーズが増えている。

「時尚先生」(エスクァイア中国版)の梁朝輝編集長もその1人だ。ファッションショーを取材するため世界中を飛び回っているが、日本はお気に入りの国だという。「ライフスタイルという面で日本は素晴らしい、日本の街にはコンテンツがある」とべたぼめしていた。

私は常々、日中の友好が重要だと説いてきた。ただ、この友好は外交関係にとどまるものではない。もっと重要なのは人間同士、民間の友好関係だ。

その意味で、中国人がこうした日本の魅力に気づいたことは大きな支えになるのではないか。単に日本が豊かだから、先進国だから憧れているのではない。日本人が築いた社会、街並み、生活に魅力を感じ、これらを生み出した日本人の精神と文化に興味を持ってくれているのだ。

日本にとっては大きなチャンスだ。中国人観光客を受け入れて経済成長につなげるという意味でもそうだが、それ以上に日本の心を伝えて、真の意味での日中友好を実現する絶好の機会なのだ。

グラビア撮影でフラッシュを浴びながら、私は日中関係の未来に大きな希望を持ったのだった。

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プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

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