コラム

中国SNS最新事情 微信(WeChat)オフィシャルアカウントは苦労の連続!

2017年06月02日(金)15時50分

日本のLINEにはない「紅包」(お年玉)という機能もある Freer Law-iStcok.

<時代は微博(ウェイボー、中国版ツイッター)から微信(ウィ―チャット、中国版LINE)へ。いまマーケティング業界で大注目の「微信オフィシャルアカウント」を開設してみた>

こんにちは、新宿案内人の李小牧です。

私は2012年に蔡成平氏との共著『中国を変えた最強メディア 微博(ウェイボー)の衝撃』(CCCメディアハウス)を出版した。微博とは「中国版ツイッター」として紹介されることも多い新浪社のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)だ。

拙著では新たなマーケティングツールとして強大な力を持ち、人民の「本音」を映し出すことで社会を揺るがす可能性を秘めたウェブサービスだとして紹介した。

我ながら時宜を得た素晴らしい本を書いたと自負しているが、中国とIT業界はとかく変化が早い。両者が合わさった中国IT業界となると、5年も経つと凄まじい地殻変動が起きている。そこで今回は「ポスト微博の衝撃」をお伝えしたい。

中国で大ブームを引き起こした微博だが、2013年をピークとして勢いが止まってしまった。大きな要因は2つある。

第一に、2012年末に誕生した習近平政権によるネット規制強化だ。2013年には何人もの「大V」(フォロワー10万人以上の認証アカウント、有力なインフルエンサーを指す)が摘発され、2014年には微博を通じて活動していた人権派弁護士や活動家が大量逮捕される事件が起きた。

一般ユーザーの利用には問題はないし、歯に衣着せぬ発言で知られる私のアカウントも潰されてはいない。とはいえ、無限の自由があるかのような錯覚が失われたのは事実だ。

【参考記事】辛口風刺画・中国的本音:スマホに潜む「悪魔」が中国人を脅かす
【参考記事】中国SNSのサクラはほぼ政府職員だった、その数4.8億件

第二の、そして最大の要因はテンセント社の「微信」(ウィーチャット、WeChat)の台頭だ。こちらは「中国版LINE」として紹介されることが多い。

微博=ツイッターは不特定多数が書き込みを閲覧することを前提としたオープンSNSであり、微信=LINEは一部の友人・知人だけが書き込みを見ることができるクローズドSNSである。こう分類すると、より多くの人に意見を伝えられるオープンSNSのほうが優れているかに思えるが、そうではない。

微博=ツイッターの世界は、多くのフォロワーを抱えたインフルエンサーや有名人にとっては都合のいい世界だが、一般ユーザーは声を上げても誰にも見てもらえない。「一個人が世界に声を伝えられる夢のサービス」だった微博=ツイッターは、現時点では有名人が発信しファンはそれを眺めるだけという状況になりつつある。

微信オフィシャルアカウントの「投げ銭」「お年玉」機能

微信=LINEは閉じられた世界であるが、それがゆえに一般ユーザーが発言しやすいという特徴がある。なにせ書き込みを読む人は基本的に友人・知人なのだから気軽に発信できるわけだ。企業や有名人が開設した微信オフィシャルアカウント(微信公众号)であっても、普段から友人との交流に使っているツールだけに、その企業や有名人に親近感を覚えやすく、有名人と一般ユーザーとの距離が縮まるという特長がある。

しかも、微信オフィシャルアカウントには日本のLINEにはない面白い機能がいくつも備わっている。その代表格が「打賞」(投げ銭)と「紅包」(お年玉)だ。

プロフィール

李小牧(り・こまき)

新宿案内人
1960年、中国湖南省長沙市生まれ。バレエダンサー、文芸紙記者、貿易会社員などを経て、88年に私費留学生として来日。東京モード学園に通うかたわら新宿・歌舞伎町に魅せられ、「歌舞伎町案内人」として活動を始める。2002年、その体験をつづった『歌舞伎町案内人』(角川書店)がベストセラーとなり、以後、日中両国で著作活動を行う。2007年、故郷の味・湖南料理を提供するレストラン《湖南菜館》を歌舞伎町にオープン。2014年6月に日本への帰化を申請し、翌2015年2月、日本国籍を取得。同年4月の新宿区議会議員選挙に初出馬し、落選した。『歌舞伎町案内人365日』(朝日新聞出版)、『歌舞伎町案内人の恋』(河出書房新社)、『微博の衝撃』(共著、CCCメディアハウス)など著書多数。政界挑戦の経緯は、『元・中国人、日本で政治家をめざす』(CCCメディアハウス)にまとめた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story