- HOME
- コラム
- 犯人目線で見る世界 ダークサイドの社会学
- 防犯対策の世界常識が日本に定着しないのは、その礎が…
防犯対策の世界常識が日本に定着しないのは、その礎が「城壁都市」にあるから
実際、日本人が大好きな戦国時代の城は、「入りにくく見えやすい場所」の典型だ。つまり、犯罪機会論を忠実に実現している。例えば、敵が城内に入りにくくなるよう、堀や石垣をめぐらしたり、敵の動きが見えやすくなるよう、城外を一望できる天守や櫓を構えたりしている。石段も、一段の幅が歩幅と合わないように、つまり、一歩で上るには広すぎて二歩で上るには狭すぎるように設計されている。
もちろん、自然の地形を巧みに利用した山城は、深い空堀や高い土塁があり、守りやすく攻めにくい。「天空の城」と称される竹田城もその一つだ。標高350メートルの山頂にあり、南北400メートル、東西100メートルに及ぶ。室町時代に土塁が築かれ、安土桃山時代に総石垣造りに改修された。
また姫路城も、犯罪機会論のアイデアとトリックを満載した城だ。例えば、天守閣に向かう道は途中から下り坂となり、攻め上がろうとする敵を、天守から遠ざかっているように錯覚させる。このトリックも、「入りにくい場所」にするテクニックである。
戦国時代、殿様を守るのに、城を築かないで、刀を渡して事足りるとする家来はいなかったはずだ。しかし、今は、子どもを守るのに、防犯ブザーを渡して事足りるとする人ばかりである。なぜ「場所で守る」という発想を持たないのか。戦国時代のドラマや小説を楽しみながら、犯罪機会論に思いをはせてほしいと願う。

アマゾンに飛びます
2025年3月18日号(3月11日発売)は「日本人が知らない 世界の考古学ニュース33」特集。3Dマッピング、レーダー探査……新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら
公園のデザインに見る日本と欧州の防犯意識の違い 2025.03.05
不法投棄に落書き...凶悪事件の現場に見る「割れ窓理論」の重要性 2024.12.10
本当に「怠慢」のせい? ヤンキース・コールがベースカバーに走らなかった理由を考察 2024.11.12
日本に「パワハラ」や「クレイマー」がはびこる理由 2024.10.15
弱体化が続く町内会・自治会と地域防犯の切っても切れない関係 2024.09.12