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今度の参議院選挙で審判を受けるのはむしろ「野党」
今回の参院選でむしろ問われるのは野党のあり方 Issei Kato-REUTERS
<参院選が始まった。当初は「ほぼ無風」と見られたが、インフレと円安で微妙に与党・岸田政権への風向きが変わりつつある。しかし今回の選挙で有権者の審判を受けるのはむしろ野党だ>
参議院選挙が22日に公示され、7月10日の投開票日まで18日間の選挙戦が始まった。岸田首相は勝敗ラインを「非改選を含めて与党で過半数」としているが、自民党優位が伝えられている現状からすればかなり低いハードルだ。むしろ「比例区で最多得票を得る野党は立憲民主党か日本維新の会か」、「立憲民主党の泉健太代表は選挙後に交代に追い込まれるのか」といったような野党側の事情に関心が集まっているが、それは今回の選挙の本質を示しているとも言える。
参議院選挙は、首相指名で優越する衆議院の総選挙と異なり、政権「選択」選挙ではない。しかし今回の参議院選挙は、2021年10月の発足直後に解散総選挙に踏み切り勝利を収めた岸田政権にとって、通常国会での予算編成や法案審議を踏まえた実質的に初めての政権「評価」選挙となる。
ところが岸田政権はこの半年間、国会運営で安全運転に徹し、国論を二分するような課題と対峙することを避ける策を取ってきた。野党第一党である立憲民主党が「政策提案」型へ路線転換し、政権与党・霞が関を糾弾する「野党合同ヒアリング」スタイルを止めたこともあって、国会では奇妙な均衡状態あるいは単なる弛緩が漂っていた感すらある。今国会では内閣提出法案(閣法)61本が全て可決・成立したが、これは26年ぶりだ。会期末の内閣不信任案と衆議院議長不信任案も大きな関心を集めなかった。
他方で4月23日の知床観光船遭難事故で岸田首相は熊本の日程を急遽切り上げて自衛隊機で帰京し、6月に発覚した自派閥若手議員のスキャンダルではシンガポールに向かう政府専用機の中から茂木敏充幹事長に電話をかけて指示している。機敏な対応は危機管理の要諦を外していない。情報漏洩等の疑念が報じられた内閣官房経済安全保障法制準備室長に対する「怒りの即時更迭」劇とも併せ見ると、「のらりくらり」の国会対応は作為的なものであり、財務省と外務省等が中心となって支える岸田首相の政権運営スタイルと広報体制は存外周到に練られたものであることが分かる。第二次岸田政権発足時の外相人事や防衛事務次官の帰趨が注目された今夏の各省人事異動も、安部・菅政権時代との違いを浮き彫りにしている。
官邸と自民党との関係も、高市早苗政調会長の立ち位置の問題があるにせよ、概ね良好に保たれ大きな火種があるとまでは言えない。「令和の元老」とも言うべき麻生太郎副総裁を頂く自民党は、昨秋の総選挙で成果を上げた野党分断策を更に推し進めた。連合との政策懇談が進み、国民民主党は予算案に賛成し内閣不信任案に反対した。6月20日開票の杉並区長選挙では、市民団体が擁立し立民、共産、れいわ、社民の推薦を受けた野党系新人候補が4選を目指した現職に187票差で競り勝ったが、今回の参議院選挙では、32ある1人区のうち野党共闘を実現し候補者を一本化できたのは11選挙区に過ぎない。
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