コラム

ウクライナ軍が7集落を解放...プーチンは「敵は目的を達成できていない」と強がるだけの「裸の王様」に

2023年06月13日(火)18時37分

230613kmr_deu05.jpg

ドニプロ川沿いはロシア軍が埋めた地雷で立ち入り禁止になっていた(同)

6月4日にウクライナ軍の反攻が始まってから主に東部ドネツク州とアゾフ海に直結する南部ザポリージャ州で激しい戦闘が行われている。ハンナ・マリャル国防次官は11日、テレグラムチャンネルで「敵は海兵隊、空挺部隊、第49軍を中心に最も有能な部隊をヘルソン方面から移動させている。ロシア軍がダムを爆破した目的は明白だ」と指摘している。

「ロシア占領軍司令部はさまざまな方向からの反攻を抑止できないことを自覚し、ウクライナ軍の行動可能な地域をドネツク州とザポリージャ州に狭める作戦を実行した。ウクライナ軍に戦力と資源を災害対策に振り向けさせ、ヘルソン州のドニプロ川左岸のロシア軍占領地域の解放を不可能にしようとしている」とマリャル国防次官は分析する。

11日にはテレグラムチャンネルを通じ「わが軍が攻勢をかけるドネツク州バフムート地区で突撃作戦を継続している。ベルクホフ貯水池エリアで250メートル前進した。南部では2方向で300~1500メートルの前進があり、ブラホダトネ、マカリフカの2つの村が解放された。わが軍が防御する地域で陣地は失われていない」と発表した。

プーチン「ウクライナ軍は目的を達成できていない」

11日、ブラホダトネではオレクサ・ドブブシ第68別働隊旅団が国旗を、ネスクチネでは第129領土防衛旅団第7機動化歩兵大隊が「10日に解放した」と旅団旗を掲げる動画をそれぞれSNSに投稿した。第7機動化歩兵大隊の司令官は「わが大隊に誇りを感じている。ウクライナの領土を解放するためあらゆることをしたわれわれ戦闘員への誇りだ」と胸を張った。

マリャル国防次官によると、12日時点でドネツク州とザポリージャ州の作戦区域で6.5キロメートル前進、90平方キロメートルを奪還し、 7集落が解放された。一度はロシア民間軍事会社ワグネルグループ創設者エフゲニー・プリゴジンが「完全掌握」を宣言したバフムート地区でも左側面で1.5キロメートル、右側面で3.5キロメートル前進したという。

東部ルハンスク州、ドネツク州を解放する「特別軍事作戦」を錦の御旗に掲げるロシアのウラジーミル・プーチン大統領はまたも面子を潰された。プーチンは9日、ソチで御用メディアの「ウクライナの反攻の芽は摘まれ、キーウ政権の攻撃力を無力化できたと言えるか」という質問に「ウクライナ軍は目的を達成できていない」と断言したばかり。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

戒厳令騒動で「コリアディスカウント」一段と、韓国投

ビジネス

JAM、25年春闘で過去最大のベア要求へ 月額1万

ワールド

ウクライナ終戦へ領土割譲やNATO加盟断念、トラン

ビジネス

日経平均は小幅に3日続伸、小売関連が堅調 円安も支
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
特集:サステナブルな未来へ 11の地域の挑戦
2024年12月10日号(12/ 3発売)

地域から地球を救う11のチャレンジと、JO1のメンバーが語る「環境のためできること」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや筋トレなどハードトレーニングをする人が「陥るワナ」とは
  • 2
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説など次々と明るみにされた元代表の疑惑
  • 3
    【クイズ】核戦争が起きたときに世界で1番「飢えない国」はどこ?
  • 4
    JO1が表紙を飾る『ニューズウィーク日本版12月10日号…
  • 5
    混乱続く兵庫県知事選、結局SNSが「真実」を映したの…
  • 6
    【クイズ】世界で1番「IQ(知能指数)が高い国」はど…
  • 7
    NATO、ウクライナに「10万人の平和維持部隊」派遣計…
  • 8
    健康を保つための「食べ物」や「食べ方」はあります…
  • 9
    韓国ユン大統領、突然の戒厳令発表 国会が解除要求…
  • 10
    シリア反政府勢力がロシア製の貴重なパーンツィリ防…
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    エリザベス女王はメーガン妃を本当はどう思っていたのか?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 5
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える…
  • 6
    健康体の40代男性が突然「心筋梗塞」に...マラソンや…
  • 7
    メーガン妃の支持率がさらに低下...「イギリス王室で…
  • 8
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 9
    NewJeansの契約解除はミン・ヒジンの指示? 投資説な…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story