- HOME
- コラム
- 欧州インサイドReport
- 「ネットゼロ金融同盟」の金融資産1京4800兆円に…
「ネットゼロ金融同盟」の金融資産1京4800兆円に ロンドンは「ネットゼロ金融市場」宣言
緑のボックスを掲げ、ロンドンを世界初の「ネットゼロ金融」の拠点にすると宣言したスナク英財務省(11月3日、グラスゴーのCOP26で)
<英中央銀行の前総裁マーク・カーニーとリシ・スナク英財務相──2人のゴールドマン・サックス出身者が資金を集めスキームを作り上げた世界初「脱炭素のためのシティー」構想とは>
[英北部スコットランド・グラスゴー]英中央銀行・イングランド銀行のマーク・カーニー前総裁は国連の気候変動問題担当特使と気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)でボリス・ジョンソン英首相の資金問題担当のアドバイザーを務める。COP26議長国のリシ・スナク英財務相と同じ米金融グループ、ゴールドマン・サックス出身だ。
英グラスゴーで開かれているCOP26の「資金デー」の3日、カーニー氏は自ら率いる「2050年にネットゼロ(温室効果ガス排出量を実質ゼロにすること)を実現するグラスゴー金融同盟」の金融資産は2年前には5兆ドル(約570兆円)に過ぎなかったが、今では米英のグローバルバンクなど45カ国450機関で130兆ドル(約1京4800兆円)に達したと報告した。
カーニー氏は演説で「転換点を迎えた。すべての金融活動の意思決定が気候変動を考慮に入れたものになるよう、気候変動を金融の最前線に移すために必要な体制が整ってきた」と述べた。ネットゼロに向け今後30年にわたって金融同盟から、温暖化対策に必要とされる100兆ドル(約1京1400兆円)が支援に充てられるようになるという。
ロンドンを史上初の「ネットゼロ金融センター」に
スナク財務相もこれに先立ち「世界の財務相、企業、投資家が共通の目的を持って集まった初のCOP。世界経済の少なくとも80%がネットゼロやカーボンニュートラルの目標を掲げている」と演説し、公的資金の拡大、民間資金の動員、世界の金融システムをネットゼロに向け再構築することを提案した。
先進国は5年間で途上国に温暖化対策資金計5千億ドル(約57兆円)を提供する計画だが、資金不足に陥っている。このため英政府は途上国が必要な資金を容易に調達できるよう「気候資金へのアクセスに関するタスクフォース」に1億ポンド(約156億円)を拠出、イギリスで数十億ポンドのグリーンボンドを発行する資本市場メカニズムを構築する。
第二の民間資金の動員は、金融同盟の資産を低炭素社会の未来に投資する。スナク氏は「投資家は自分の投資による気候変動への影響を損得という指標と同じくらい明確にする必要がある」という。最後の、世界の金融システムをネットゼロに向け再構築するために必要なツールは次の通りだ。
一貫した良質の気候データ、ソブリン・グリーンボンド、サステナビリティーに関する情報開示の義務化、気候リスクの監視、強力なグローバル報告基準だ。企業による気候関連財務情報の開示はイギリスではすでに義務化されており、他の35カ国も同様の取り組みに同意した。スナク氏はロンドンが史上初の「ネットゼロ金融センター」になると宣言した。