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スコットランド議会選 独立派が3分の2近く議席獲得か 英分裂の危機強まる EU離脱がナショナリズムに火を放つ
炊き出しの料理を煮込むボランティア(筆者撮影)
メル・ギブソンが好演した米映画『ブレイブハート』のウィリアム・ウォレスの歴史が教えてくれるようにスコットランドとイングランドは犬猿の仲。1707年 グレートブリテン王国に吸収され、スコットランド議会は廃止の憂き目にあう。その後スコットランドも産業革命と大英帝国の繁栄の恩恵に預かる。しかし第二次大戦で大英帝国は崩壊し、イングランドもスコットランドも苦難の時代を迎える。
スコットランドが、独立を党是とするSNPを支持し始めたのはイギリス経済が苦境に陥った1970年代以降。サッチャー革命によりスコットランドの石炭、鉄鋼、造船、製造業は壊滅的な打撃を受ける。その一方で潤沢な北海油田の収入はイングランドに吸い取られ、北海油田さえ取り戻せばスコットランドは独立できるという気運が生まれる。地方分権を唱える労働党のトニー・ブレア首相(当時)の登場で1999年にはスコットランド議会が復活した。
これがガス抜きになったのはほんの束の間で、独立の気運はさらに膨らむ。ブレア政権の新自由主義、イラク戦争でスコットランド労働党は民心を失い、SNPが2007年に少数政権を樹立。11年には単独過半数を獲得し、14年に悲願のスコットランド独立住民投票にこぎつけた。しかし賛成45%、反対55%の大差で否決され、独立の気運は収まったが、ジョンソン首相が主導したEU離脱がスコットランド・ナショナリズムに再び火を着けてしまった。
実は用心深いスコットランドの"雌ライオン"
火の玉のような激しい言葉でジョンソン首相を批判するスタージョン氏だが、グラスゴーの有権者は「彼女は用心深い」と口をそろえる。コロナ対策では社会的距離政策、検査、感染防護具の着用を徹底して被害を抑え、封鎖解除も徐々に進めている。SNP前党首でスタージョン氏にとっては「政治の師匠」アレックス・サモンド前党首の性的スキャンダルも英メディアの集中砲火の中、巧みなハンドルさばきでダメージを最小限にとどめた。
スタージョン氏がこれだけ高い支持率を集めるのはスコットランドと住民を愛する「ウォーム・ハート(温かい心)」と「ノー・ナンセンス(真面目)」な政治姿勢にある。「イギリスのワクチン計画が上手く行ったのは強欲さと資本主義のおかげ」「3回目のロックダウンをするぐらいなら死体の山が高く積み上がるのを見た方がマシ」という発言が報じられ、首相公邸を改装するパートナーの散財すら抑えられないジョンソン首相とは大違いである。