コラム

スコットランド議会選 独立派が3分の2近く議席獲得か 英分裂の危機強まる EU離脱がナショナリズムに火を放つ

2021年05月05日(水)14時21分

SNPは医療や教育、子供手当、住宅予算の拡充をマニフェストに並べる。コロナ対策で財政赤字が膨れ上がる中、追加財源はどこにあるのかという批判はある。しかしスタージョン氏が目指す政治こそ、グローバル化で痛めつけられ、デジタル化についていけない有権者の痛みを和らげる道なのかもしれない。筆者はスコットランドにはイギリスにとどまってほしい。しかしスコットランドをジョンソン首相に任せておけないという気持ちも理解できる。

次の5年、スタージョン氏は2度目の独立住民投票を行う機会をうかがうだろう。ジョンソン首相が住民投票に反対すればするほどSNPの人気は沸騰する。用心深いスタージョン氏はEU加盟の見通しが立たない限り、おそらく独立には突き進まないだろう。EUでは分離・独立問題を抱えるスペインやベルギー、イタリアがスコットランドのEU加盟に難色を示すのは必至だからだ。

最近の世論調査では独立反対派と賛成派が拮抗する。スタージョン氏は機が熟するのをじっと待つ。それまでは緑の党と協力し再生可能エネルギー産業を伸ばしてスコットランドの経済基盤を強化するとともに、核ミサイル原子力潜水艦の基地問題でジョンソン政権に揺さぶりをかけてくるはずだ。そして自治権を最大限にまで拡大する。スタージョン氏が一気に動くのは独立でスコットランドを間違いなく幸福にできる環境が整ったと確信できた時だ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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